前回は居住用財産を譲渡して譲渡益が出た場合の課税の特例について説明しましたが、今回は譲渡損が出た場合の課税の特例について説明します。
居住用財産を譲渡することにより譲渡損が生じた場合には、以下の二つの特例が設けられています。
【1】居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
【2】特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例
平成16年度の税制改正により、土地・建物等の譲渡をすることにより生じた損失の金額については、譲渡所得以外の所得(給与所得や不動産所得等)との通算を認めないこととされました。ただし居住用財産の譲渡による損失については、上記の二つの特例の適用により通算及び繰越控除をすることが可能となります。
まず、【1】居住用財産の買換え等の場合の譲渡損失の損益通算及び繰越控除の特例に関しては、マイホームを譲渡し、住宅ローンで新たにマイホームを取得した場合に、その譲渡で生じた損失の金額については、損益通算ができ、さらに通算してもなお控除しきれない部分の金額は、譲渡の年の翌年以後3年以内の各年分の繰越控除が認められます。
具体的な要件は次の通りです。
右記の適用要件の中に、買換資産については住宅借入金等で購入しなければならないというものがありますが、この借入金については住宅ローン控除の適用も受けることができます。住宅ローン控除とは住宅の取得に要する借入金残高に応じて所得税が減額される規定です。
つまり、『居住用財産の買換えの譲渡損失の繰越控除』の特例と『住宅ローン控除』の特例は併用適用が出来るということです。
次回は譲渡損のもう一つの特例【2】の特定居住用財産の譲渡損失の損益通算及び繰越控除について説明します。