個人が贈与によって財産を取得した場合には、その贈与によって財産を取得した者に対して贈与税が課税されます。 従って、農業を営んでいる個人がその経営を子供に行わせるため、農地等を贈与した場合においても、その贈与を受けた子供は原則として贈与税が課税されることとなります。
しかし、農地の贈与の場合は農地の細分化の防止、後継者育成などの見地から、子供が引き続き農業経営を行うなど、一定の要件を満たした場合には、農地等について発生した贈与税の納税が猶予される「贈与税の納税猶予制度」が設けられています。
この制度を適用するためには、まず下記の要件をすべて満たす必要があります。
【贈与者の要件】
贈与の日まで3年以上引き続き農業を営んでいた個人
【受贈者の要件】
贈与者の推定相続人である者
贈与のあった日において年齢が18歳以上の者
取得の日まで3年以上引き続き農業に従事していた者
取得後、速やかに農業経営を開始すると認められる者
【農地等の要件】
贈与者が農業をしている農地等 その農地等の全部が受贈者の1人に贈与されたものである農地等
(一部は不可)
都市営農農地等である農地等
上記要件を全て満たした上で、申告手続きを行うことにより、贈与税の納税猶予制度が適用されますが、猶予されている期間内において農業経営を廃止したり、贈与された農地等の譲渡があったりした場合には、納税猶予が打ち切りとなることもあります。 (申告手続き・納税猶予が打ち切りとなる場合については次回説明します。)
この贈与税の納税猶予制度の適用に関しては、まず、「贈与者」、「受贈者」、「農地等」がそれぞれの要件に該当することをしっかり確認した上で、農業経営についての長期的なビジョンを持って実行しなければ、税金を余分に払っただけの結果に終わることも考えられますので、事前に相続税・贈与税の専門家に相談して下さい。