Q.質問
今回の民法改正で、法定利率が5%から3%に変更されると聞きました。また、この法定利率が変動制であるとも聞きました。どういう内容なのかご説明ください。
A.回答
法定利率とは、約定により利率が定められていない金銭債権について法が定めた利率です。現行民法では年5%、商行為に基づく債権については商法で年6%とされていました。
この法定利率について、改正民法は、改正当初の3年間を年3%の利率とし、その後は3年ごとに利率の見直しを行なうこととし、商法での法定利率の定めを廃止しました。これは、従来の法定利率が市場金利を大きく上回る状態が続いていたこと、現代では個人が投資等に参加することも容易であり商行為に基づく債権を特別扱いする合理的理由に乏しいこと等からなされた改正です。
3年ごとに利率を見直す変動制となりますが、以下のとおり、実質的には市場金利に大幅な変動がない限り法定利率は変更されないような制度設計がされています。
改正民法では、法定利率は3年を1期とし、各期の初日(4月1日)の属する年の6年前の1月から前々年の12月までの5年間の短期プライムレートの平均(0.1%未満切捨。この平均値を基準割合といいます)を用い、直近で法定利率に変動があった期の基準割合と比較して1%以上の変動が生じた場合のみ、1%刻みの数値で変更されます。具体的な基準割合は法務大臣が告示します。このような算定方法ですので利率が変更されるのは市場金利が非常に大きく動いたときに限定されるのです。
なお、1つの債権については、当該債権の債務者が遅滞の責任を負った最初の時点の法定利率が適用され、事後的に変動することはありません。例えば交通事故等の不法行為に基づく損害賠償請求の場合は不法行為時の、契約違反等の債務不履行責任に基づく損害賠償請求の場合は損害賠償請求時の法定利率が適用されます。
また、逸失利益等の将来において取得すべき利益や負担すべき費用についての損害賠償額を定める場合、その利益を取得すべき時または費用を負担すべき時までの利息相当額を控除するとき(いわゆる中間利息の控除)は、その損害賠償請求権が生じた時点の法定利率によることが明文化されました。不法行為の場合は基本的には不法行為時の、債務不履行の場合は義務違反時の法定利率を用いることになります。