Q.質問
民法改正により、債権の消滅時効の時効期間はどうなるのでしょうか。
A.回答
現行法下での職業別短期消滅時効や商事時効が廃止され、原則として①債権者が権利を行使することができることを知った時から5年間行使しないとき、または、②権利を行使することができる時から10年間行使しないとき、に該当すれば、債権は時効によって消滅することになりました。①②のいずれか早く到来した時が消滅時効期間の満了時となります。
例えば、当初から権利を行使できることを知っていれば5年で時効、5年を過ぎてから権利を行使できることを知った場合や、全く知らないままの場合は10年で時効、2年経過時に権利を行使できることを知った場合は7年で時効、となるわけです。これが原則です。
そして、特則として、生命・身体の侵害による損害賠償請求権については、その法益の重要性から、時効期間の長期化がはかられ、先ほどの原則の②の期間が10年ではなく20年とされました。これは、生命・身体の侵害が契約違反等債務不履行による場合でも、交通事故等不法行為による場合でも同じです。
なお、現行法は不法行為に基づく損害賠償請求権は、損害及び加害者を知ったときから3年間行使しない場合には時効となると定めており、改正法も身体・生命の侵害以外の場合、例えば物損等の場合には、この3年間の時効期間を維持しています。また、不法行為のときから(権利を行使できるときから)20年間権利を行使しないときも、債権は時効消滅することを改正法は明記しました。つまり、不法行為による身体・生命の侵害以外の損害賠償請求権は、権利を行使できることを知った時から3年間(原則の5年間より短期)権利を行使しない場合、または、権利を行使できるときから20年間(原則の10年よりも長期)行使しない場合には、時効により消滅することになります。
この改正法が適用されるのは、改正法施行日(2020年4月1日)以降に発生した債権です。但し、施行日以降に発生した債権であっても、その発生原因である法律行為が施行日前になされている場合には、現行法が適用されますので注意が必要です。例えば、施行日前に敷金が差し入れられ、施行日以後に明け渡しが完了して敷金返還請求権が現実化した場合等の時効期間は現行法によるものと考えられます。