Q.質問
私は親戚のAからお金を貸してくれと頼まれています。
Aには昔に世話になったこともあり、断りにくいのですが、金銭にいいかげんなところもあり困っています。知人は「公正証書」にしておいたらと忠告してくれます。
公正証書ならどんな利点があるのですか。
A.回答
まず、公正証書とは、公証役場で公証人という国家公務員(多くは裁判官や検察官を辞めた人達がなります) が当事者の申述に基づいて作った契約書です。この公正証書による契約書と、私人間で交わした契約書ではどこが違うかと云いますと、公正証書では、公証人が貴方と貸す相手方とを印鑑証明書等で確認します。従って、契約書を作る意思がないのに無理やり書かされたものであるから無効の契約書であるといった主張が無くなります。また、公正証書は公証人の面前で作りますから、私は知らないという主張がなくなります。
公正証書の一番の利点は、借主が、返還期日になっても返してくれない場合、通常であれば、裁判を提起して判決をもらい、それが確定した時、執行文を得て、強制執行に入るのが通常の方法です。
ところが、金銭貸借の公正証書の場合、強制執行認諾条項といって、公証人が当事者の申述に基づいて、返済期限が来れば直ちに強制執行を受けてもよい、という条項(執行証書) が入っていますと、貸金の相手方が返済期限に返済しないときは、直ちに強制執行をすることができます(民事執行法第22条第5号)。
こうしたことが、金銭消費貸借契約書を公正証書で行うことが最大の利点であるということです。
さらに、公正証書の原本は公証役場に保管されています。その保管期間は20年と言われておりますので、公正証書を作成した時、公証役場からその謄本が交付されますが、強制執行をするまでに、公正証書を失った場合は、公正証書を作成した公証役場で、その公正証書の謄本を交付してもらうことが出来るので安心です。
このように、金銭消費貸借契約を公正証書にしておくと、貸金の返済期日に裁判を起こさなくて済み、便利であるうえ、契約書を紛失しても、その謄本の再交付を受けることが出来て安全ということが出来ます。以上が公正証書の大体の利点と云えます。