Q.質問
私は都市近郊で農業を営んでいます。家族は妻、長男、大学生の次男、嫁に行った長女がいます。
長男は私と一緒に農業をしており、私の死後も農業を続けられるよう、農地は長男だけに相続させたいと考えています。そのため、どんな方法がありますか。
A.回答
現在は家督相続という制度はなくなり、相続人は互いに法定の割合による共同相続ということになっております。
これを前提にして、貴方の言われる農地を長男だけに相続させる方法について考えてみましょう。
まず、遺言で農地は長男に全て与えるとする方法があります。
しかし、この場合、農地以外の財産を含めて、農地の割合が全財産の2分の1を超えている場合、他の兄弟やお母さんの相続分を侵害していることになり、お母さんや他の兄弟から遺留分減殺の手続きを起されることがあります。遺留分とは全相続財産の2分の1について遺言によっても侵されない相続人の権利です。
次に、生前一括贈与という方法があります。
これは、農業経営者が租税特別措置法の要件に従って、生前に農業後継者に対し、農地を一括して贈与する場合には、相続が開始(被相続人の死亡時)した場合、通常の贈与税率によることなく相続税相当額を支払うことでよいとされる制度です。この制度を導入したのは農地の細分化を防ぎ、農業の継続をし易くするための制度ですが、この生前一括贈与も他の共同相続人からの遺留分減殺請求の対象となります。
遺留分制度が排除できないとすると、遺言の場合と同様、相続開始時に他の相続人の遺留分を侵害している場合、遺留分減殺手続の対象となるということです。
このように、農地や住居家屋以外に、相当多額の資産を所有している場合は別として、長男だけに大きな資産が相続される不合理をいかに少なくするかが問題です。
次に、よく使われるのは、相続開始後3ヶ月以内に、家庭裁判所に対して申立てられる相続放棄の申述書によるものです。これは、強制はできませんが、事前に、長男以外の相続人に対して、貴方の死後、相続放棄をして貰えるようよく頼んでおくことで、貴方の死後3ヶ月以内に家庭裁判所に相続放棄の申述書を出して、それが受理されれば、相続放棄が成立します。
以上三つの中から、貴方の事情に応じて選択しては如何でしょうか。