Q.質問
老齢の私は身寄りがなく、一人で生活しています。今は自分で何事も処理できますが、いつまで出来るか将来が不安です。資産の管理や施設への入所などを助けてもらう準備をしておきたいのです。任意後見という制度があるそうですが、どのような制度でしょうか。
A.回答
任意後見の制度は、判断能力が十分ある段階で、将来自分の判断能力が十分でなくなった場合に、財産管理や監護をしてもらうために特定の個人や法人との間で、後見人として代理権を付与する契約を結んでおく制度です。具体的には「任意後見契約に関する法律」に定められています。
まず、任意後見契約は法務省令で定めた様式の公正証書でしなければならないことになっておりますので、公証役場で公証人に契約書を作ってもらうことになります。公証人は任意後見契約書が出来上がると、それを職権で任意後見人登記することになります。
後見人には誰を選任すればよいかですが、弁護士や司法書士のような法律専門家でなくても、信頼のおける親戚や知人でもかまいません。そして、任意後見契約が効力を発生するのは、貴方の判断能力が低下してきたとき、医師の診断書を添えて家庭裁判所に任意後見人を監督する後見監督人の選任を申立て、任意後見監督人が選ばれたときに任意後見契約が効力を発生することになります。
任意後見では、後見はすべて代理行為によって行われます。代理関係は本人が直接意思表示が出来る時でも、代理人の意思表示によって本人に法律効果が帰属する制度です。仮に、代理人の意思表示が本人である貴方の意図するところと違っていても、当然に取り消すことが出来ない制度です。代理権の行使は慎重に行う必要があります。そこで、任意後見契約に関する法律6条で「任意後見人は、第2条第1号に規定する委託に係る事務を行うに当たっては、本人の意思を尊重し、かつ、その心身の状態及び生活の状況に配慮しなければならない。」としており、任意後見人は本人に対する配慮義務を負っております。
以上が任意後見制度の概要です。