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過去の賃料が不相当遡っての増額請求は…

Q.質問

 私は5年前から住宅をAに貸しています。Aは古い友人で生活も苦しかったことから、相場より随分安い賃料で貸してきました。契約ではAの事業が好転すれば増額が出来ると取り決めています。そこで事業がうまくいった2年前に遡って賃料を増額したいと考えています。どうでしょうか。

A.回答

   まず、賃料の増額について、当事者間に合意が成立しない場合について申し上げます。
 この場合は、賃料増額の意思表示を事前にしておく必要があります。これは借地借家法32条1項で賃料増額請求は将来に向かってのみ効力を生じるもので、遡って増額を請求することは到底認められないものだからです。そして、この意思表示は通常内容証明郵便によって行います。裁判所に訴えを提起する前に、調停前置主義といいまして、賃料増額の調停申立てをしなければなりません。

 調停では、裁判官と調停委員2名で調停します。その調停で合意が成立すれば、その合意されたものが新賃料となります。この新賃料についての合意が出来なければ、訴訟手続きを提起する必要があります。

 賃料増額の訴訟では、先に述べた、内容証明郵便を賃料増額の意思表示をしたことの証拠として提出することになります。請求をするについては、賃料が不相当になったことを主張するわけですが、賃料増額請求は将来に向かってのみ効力を生じますが、請求の根拠を主張する必要があります。賃料増額訴訟では必ずと言ってよいほど相当賃料について鑑定がなされます。こうして裁判所で新賃料が決定される訳ですが、彼方の希望通りとはならない可能性があります。

 以上は公的手続きによる賃料増減の手続きですが、こうした公的な手続きでなく当事者間の合意が出来ればその合意は有効です。そして、当事者間での合意による賃料額を決めることができます。ご質問では「Aさんの事業が好転すれば増額が出来る」とされているようですが、過去に遡って増額できるとの合意とは理解しにくいようです。しかし、Aさんと話し合って、Aさんが過去に遡っての賃料増額に同意すれば、それは可能ですから早めに話合ってみてください。

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