Q.質問
私は妻と二人で借家に住んでいます。ところが先日、妻が調理のちょっとした不注意から火事を起こし、借家を全焼させてしまいました。隣家には延焼しませんでしたが、私たち夫婦はどのような責任を負うことになるのでしょうか。「失火の責任に関する法律」では、故意または重過失の場合でなければ責任を負うことはないそうですが、私達は責任を免れることが出来ますか。
A.回答
失火の責任に関する法律は、日本のように木造家屋が近接して建てられているような場合が多く、いったん出火すると広範囲に燃え広がり、その損害賠償責任も多大なものとなることから、少しの過失は責任を問わないことにしようとの意図で作られたものです。そこでは失火につき故意または重大な過失がある場合に責任を問い、軽過失の場合は免責するというものです。
それでは、貴方の場合、損害賠償の責任を負う必要がないのでしょうか。
ここでは、不法行為(失火による加害行為責任)による損害賠償という考えと異なる考えが必要です。
貴方は家主から借家を賃貸借契約によって借りておりますので、契約責任について考える必要があります。
貴方は借家に住んでいますから、家主さんとの間で借家契約を締結しています。家主さんとの関係では借りたものを善良な管理者としての注意をもって管理し、契約が終了すると借家を家主さんに引渡す債務があります(民法400条)。ところが貴方の場合建物は焼失して無くなっていて、引渡しが出来ませんので債務不履行となります。そうすると、建物の時価相当の損害賠償義務が生じることになります。
この場合、貴方の奥さんの不注意ということですが、家主さんとの関係では履行補助者という関係になりますので、貴方の債務不履行を免れることは出来ません。
この損害賠償義務は、建物賃貸借契約によって生ずるものです。従って、責任が軽いといっても建物の管理につき善良な管理者としての注意を怠っていたことは否定することが出来ませんので、貴方は損害賠償義務を免れることはできません。