Q.質問
私はAさんに建物を貸しています。
契約の当初からAさんは忙しいとの事で顔を見せず、いつも奥さんのBさんとの聞で契約の更新等の話をしています。
この度、賃料の改定の話し合いをし、Bさんとで合意した金額について、Aさんは自分は承知しておらず無効だと云います。Bさんとの合意は認められないのでしょうか。
A.回答
建物の賃貸借契約は、貴方とAさんとの間で締結されているのですから、本来、賃料改定はAさんが承認しなければ、Bさんと合意したからと云っても、賃料改定の効力はAさんに及ばない訳です。
ところで、民法は以下のとおり761条で日常の家事に関する連帯債務の規定を設けております。それは、「夫婦の一方が日常の家事に関して第三者と法律行為をしたときは、他の一方はこれによって生じた債務について連帯してその責任を負う。ただし、第三者に対し責任を負わない旨予告した場合は、この限りではない。」と規定しています。そして、最高裁は「夫婦が相互に日常の家事に関する法律行為につき他方を代理する権限を有することをも規定しているものと解すべき…」(最判昭44・12・18)としています。
ところで、Bさんのした賃料に関する改定が、日常家事の範囲内の行為であるか否については検討する必要があります。日常家事とは、夫婦の共同生活関係から生ずる通常の事務一般を云いますが、具体的内容については、夫婦の社会的地位、職業、経済状況等によって判断すべきものとされています。ご質問での賃料改定については、賃貸借契約書に記載されているものと思われ、Aさんはそれをご承知のはずです。こうしたことに加え、Aさんは最初から顔を見せず、奥さんのBさんが全てAさんの代理として、契約の締結、更新等をしてきたようであり、Aさんもそれに不服なく経過してきたようですから、Aさんを代理したBさんとの問で合意した賃料の改定は常織的な範囲内に収まっている限り日常家事の法律事務に属するものと考えられます。
従って貴方がBさんとの間で合意した賃料改定の合意は有効に成立しているとみてよいでしょう。