Q.質問
私は所有するアパートの一室をAさんに貸しています。かなり前の契約で、賃料はずっと据え置きになっています。その間、公租・公課の上昇もあり、経営が苦しいので、この度、賃料の値上げをAさんに申し入れました。
Aさんは景気も悪く、収入も減少していると云って、いい返事をくれません。
これからどのような手続きで賃料の値上げを進めていけばよいでしょうか。
A.回答
借地借家法では、租税・公課の増減、不動産価格の上昇・低下、近隣同種の建物の借賃に比べて不相当となったときは、建物賃貸借契約の当事者は賃料の増減を将来に向かって請求できる旨を定めています(借地借家法32条1項)。従って、当事者間で話がつかない場合、裁判所に賃料増減請求の手続きをしなければなりません。
この場合、調停前置と云いまして、管轄の簡易裁判所に調停を申立てることになります
(民事調停法24条の2)。
また、当事者間に合意が成立する見込みがないような場合、調停申立て後、当事者間に調停委員会の定める調停事項に服する旨の書面による合意があるときは、事件の解決のため調停委員会は調停条項を定めることができ、これが調書に記載されたときは、その記載は裁判上の和解と同一の効力を有することになります(民事調停法24条の3)。こうしたことは、家賃の増額(または減額)の程度に比べて、当事者の費やした時間的、経済的、精神的な負担を出来るだけ少なくしようと意図するものです。
こうした調停でも調停が成立しない場合、訴訟による解決ということになります。この賃料額増減訴訟の場合、増減額を主張する当事者は、自己に有利な訴訟資料を裁判所に提出して争うことになります。
貴方の場合、租税等の負担の増大、土地・建物の価格の上昇や、生活物価が上がったことや、近隣の同種の建物賃料に比べて不相当になったこと等を主張立証していくことになるのですが、具体的には裁判所で選任した不動産鑑定士による鑑定が基本になるでしょう。この鑑定費用ですが、20ないし30万円といったところでしょうか。この額を裁判所に納付することになります。これで、結果的に期待通りの結果が得られればよいのですが必ずしもそうとは限りません。