Q.質問
私は知り合いのAさんに頼まれ、AさんとBさんとの間の金銭消費貸借契約に、債務者Aの署名の後ろに肩書きのない書名をしました。
私はAさんから証人となる事を頼まれて署名したのであり、保証人となるつもりは全くありません。またAさんとそれほど親しいわけではありません。
Bさんから保証人としての責任を問われることがあるでしょうか。
A.回答
貴方はAさんから証人となることを依頼されただけであって、保証人となる意思もなく署名したと言うことですが、保証契約が成立するのは、保証意思のもとに署名する必要があります。保証意思ではなく、別の意思で署名するのであれば、署名人としての立場を明確にしておく必要があります。
古い判例ではありますが、「証人」の肩書きのもとに署名した場合について、保証責任を認めたものもありますから注意を要します。貴方のように金銭消費貸借契約書に債務者であるAさんの後ろに肩書きもなく署名したら、保証人としての責任があると訴えられることもありえます。こうした場合に、「金銭の貸借を証する書面に氏名を記載し、押印する行為は、その貸借について何らかの責任を負う意思を表示したと解される場合もありうる・・」とした上で、①被告はAのために連帯保証をしなければならないほどAから利益を受けていないこと、②原告とも、連帯保証をしなければならないほどの親しい関係にないこと、③金銭の貸借の経験もないこと、から見て、Aから「原告から金員を借用するについて証人になって欲しい」と告げられ、Aの原告に対する債務について責任を負うという意思は全くなく署名押印したという被告の主張を認めた判例(東京地裁昭和58年9月5日判決)があります。
貴方のように、単なる署名のみで必ず責任を問われることは多くはないでしょうが、保証人としての責任を問われた場合に、保証意思で署名したものではないと言うためには、①Aさんとの人的な関係、②署名をするに至った具体的な事情、③AさんBさんや貴方の職業や地位、④過去にAさんBさんのために保証したかどうかなどからみて、保証意思で署名したとするのは不自然である等の反証をあげる必要があるでしょう。