Q.質問
私はマンションの一階を借りて「中華料理店」を経営していますが、この度、所有者が建物を売却することになりました。所有者が変わっても営業を継続することができるでしょうか。
また、賃料の30ヶ月分を保証金として入れていますが、この保証金はどうなるのでしょうか。
A.回答
借地借家法第31条の規定がありますから、貴方は新所有者との間で営業を継続することには問題がありません。 それでは、保証金の返還義務も新所有者に負わせることができるかについては、問題があります。マンションの譲渡に際して、旧所有者と新所有者間で保証金の返還債務も新所有者が引き受ける旨の合意ができている場合は一応安心できますが、そうでなければ、新所有者にそのまま返還義務を負わせることが出来ない場合があります。
保証金については、敷金的な意味もありますが、それが多額である場合、通常の敷金の額を超える額については建設協力金〔消費貸借〕であるとするのが判例の立場です。最高裁の判旨では「・・本保証金は、その権利義務に関する約定が本件賃貸借契約書の中に記載されているとはいえ、いわゆる建設協力金として右賃貸借とは別個に消費貸借の目的とされたものというべきであり、かつ、その返還に関する約定に照らしても、賃借人の賃料債務その他賃貸借上の債務を担保する目的で賃借人から賃貸人に交付され、賃貸借の存続と特に密接な関係に立つ敷金ともその本質を異にするもの・・」であるとし、「・・新所有者は、特段の合意をしない限り、当然には保証金返還債務を承継しないものと解するのが相当・・」としており、これが判例の立場であると考えるべきです。あなたの場合、賃料の30ヶ月分を保証金として預託しているそうですが、判例の考え方によりますと、全額が敷金と同様に賃借人の賃貸借契約上の債務を担保するものとは見られない可能性が大きいと考えます。そうなると、保証金についても、新所有者が返還する旨の合意をするように旧所有者と交渉してみてはいかがでしょうか。