自宅のトイレが詰まり、慌ててネット広告で見つけた業者に電話しました。出張費込みで数千円程度の工事費と言われ、電話の対応もしっかりしていたため依頼しました。ところが作業の途中で部品交換や別途の工事が必要であるため、総額15万円程度の費用が必要と言われました。どう対応すれば良いでしょうか。
作業を開始してから、突然、部品交換や別の工事が必要と言い始めるのは、要注意の業者です。一旦作業を停止させ、必要な工事の内容と費用の見積書を作成させて、引き続き工事を依頼するかは検討すること、既に行なった工事については正当な費用を後日支払うことを伝え、退去を求めましょう。業者が見積書の作成を拒否したり、直ちに工事を進めることや、直ちに支払うことを求めて居座る場合には警察を呼ぶのも一方法です。
当該業者が見積書を作成した場合には、別業者に相見積もりを依頼して、本当に必要な工事か、価格は適正かを再検討してください。
既に代金を支払ってしまった場合でも、クーリングオフにより代金を取り戻せる場合があります。
本件は、トイレ詰まりを解消する作業(役務提供)をする業者が、相談者の自宅で契約を締結して役務の提供をする、「訪問販売」です。通常、広告等を見て、自ら業者に来訪して契約することを求めた場合には、業者からの「押し付け販売」ではないため、訪問販売における消費者保護規定の適用は除外されます(特定商取引法26条6項)。しかし、本件のように、業者が広告で安価な価格のみを表示しており、これに基づいて消費者が業者に、来訪して広告どおりの安価での契約締結を求めたところ、実際には広告の表示額から大きく乖離した高額の契約を業者がさせた場合は、「押し付け販売」に他ならず、訪問販売における消費者保護規定が適用され、クーリングオフが可能となります(同法9条)。契約時に業者は契約内容を明らかにする書面を消費者に交付する義務を負っています。この書面交付から8日以内に、業者へ書面あるいはメール等の電磁的記録で、クーリングオフを行なう通知をしてください。もし、業者が契約内容を明らかにする書面を交付していないなら、8日間の起算点が到来せず、クーリングオフ可能な期間が継続します。
既に役務提供を受けていても、クーリングオフができれば、代金返還請求権を得ることができます。但し、悪質業者が代金返還に応じる可能性は極めて低いのが現実です。まずは依頼する業者を慎重に選ぶこと、来訪した業者に疑問を感じたらすぐに工事を停止させ、代金を支払う前に、速やかに消費生活センター等に相談することをお勧めいたします。