膵臓で作られた膵液を十二指腸に流す管を膵管といい、その粘膜にできる膵管内乳頭粘液性腫瘍(IPMN)は、最初良性の腫瘍として発生し、時間を経て最終的には浸潤癌になることが知られています。
☆膵管内乳頭粘液性腫瘍
(IPMN)の症状
膵癌と同じで病気の進行とともに、上腹部痛、腰痛、腹痛及び背部痛が見られ、糖尿病が悪化することがあります。画像検査で腫瘍が存在する膵管の部位によって「主膵管型」と「分枝膵管型」に分けられます。
「主膵管型」は、悪性化の重要な指標とされていますが、画像検査で主膵管径が1㎝を超える「主膵管型」の場合、約60~70%が浸潤癌であることが分かっています。また「分枝膵管型」といわれる主膵管への進展がない場合は、大部分治療が必要のない良性の病変で、悪性の所見がなければ経過観察だけで済むこともあります。
☆膵嚢胞性腫瘍に対する検査
膵嚢胞性腫瘍とは、腫瘍の中に液体の溜まった袋状の構造(嚢胞)を含む腫瘍で、IPMNをはじめ、膵嚢胞性腫瘍の疑いがある場合、複数の画像、組織検査を併せて行い、総合的に判断し治療方針を決定します。
⒈CT検査
近年、CTの発達により、数㎜単位の膵臓の微細な構造まで検出できるようになりました。また、造影剤を注射して撮影するCT検査では、膵腫瘍の大きさやひろがり、悪性所見などの有無を調べることが可能です。
⒉MRI/MRCP(MR胆管膵管撮影)検査
造影剤を使用せずに、膵管や胆管を特に強調して描出することが可能で、膵管拡張の程度や嚢胞性腫瘍との位置関係を評価したり、膵管と交通のない嚢胞性病変を描出することが可能です。
⒊超音波内視鏡検査(EUS)
胃カメラの先端に超音波装置が装備されており、胃カメラと同じ要領で、口からファイバーを入れ、胃や十二指腸の壁を通して、膵臓、胆管に異常がないかエコー検査を行います。
⒋内視鏡的逆行性胆管膵管造影検査(ERCP)
ERCPは、内視鏡を使って胆管・膵管を造影する検査です。口から十二指腸まで内視鏡(胃カメラ)を入れ、その先端から膵管・胆管の中にカテーテルを挿入、カテーテルから造影剤を入れて、膵管や胆管のX線写真をとります。ERCP検査では、スコープを利用して膵管内の内視鏡検査(膵管鏡)や、管腔内超音波という膵管の中にエコーカテーテルを挿入した特殊な検査を行い、病変の広がりや形態を観察することができます。膵液を採取して細胞の悪性度の判定することも可能です。
☆IPMNに対する治療
①「主膵管型」のIPMNと診断された場合には、癌化している可能性が高いため外科手術が推奨されます。
②「分枝膵管型」の場合は、嚢胞の大きさや主膵管の太さ、結節腫瘤の有無や随伴症状など癌化が疑われる所見に応じて、手術するか、定期的な検査により経過観察するかを決定します。特に、主膵管への進展がなく、腫瘤がはっきりしない「分枝型」の場合は、癌化が認められても、早期の段階で診断・治療を行えば、根治できます。
最後に、IPMNをはじめとする膵嚢胞腫瘍は早期発見が大切です。その診断・治療方針の決定は、専門的な知識、技術が必要ですので、「IPMN」と疑われたら、治療経験豊富な専門施設を受診することが必要です。