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不貞行為を行った側からの養育費支払い請求

質問.

5年前、私はA子と結婚し、結婚2年目に甲が生まれました。ところが、後に甲はA子が結婚前からの交際相手である男性との不倫関係でできた子だとわかりました。最近、この不倫関係が原因でA子とは離婚することになりましたが、A子からは甲の養育費の請求がなされています。私はこの請求に応じなければならないのでしょうか。

回答.

妻が婚姻中に懐胎した子は夫の子と推定されます。また、婚姻の成立(入籍)の日から200日を経過した後、又は婚姻の解消等から300日以内に出生した子は婚姻中に懐胎したものと推定されます(嫡出の推定。民法772条)。甲は婚姻後2年目に出生しているので、嫡出子と推定されます。嫡出子であることを否認するためには、夫が、子の出生を知った時から1年以内に、子又は親権を行なう母に対して嫡出否認の訴えを提起することが必要です。この期間を過ぎると法律上の親子関係が確定し、仮に血縁上の父子関係がないことが証明されても覆すことはできません(但し、民法が規定する嫡出推定の期間内に子が出生したとしても、夫のみが長期間外国滞在中に妻が懐胎した等、妻が夫の子を懐胎し得ない事情がある場合には嫡出推定の基礎がないので民法772条の適用はなく、親子関係不存在確認の訴えをいつでも提起することができます)。

甲の出生から3年が経過し、ご相談者と甲との間で、法律上の親子関係が確定している以上、ご相談者は甲の養育費を分担する義務があるのが原則です。但し、例外として養育費分担の請求が権利の濫用として退けられることがあります。例えば、夫の子でないことを妻は確知しているにも関らずこれを隠し、夫が嫡出否認の訴えを提起する機会を失わせ、他方、夫は離婚に至るまで子の監護・養育のために相当高額の費用負担をしており、離婚後の妻の経済状況をみても一人では子の監護費用を負担できないという事情も伺えない、等という場合、最高裁は、妻からの養育費分担請求を権利の濫用として認めませんでした。

ご相談者の場合も、上記の裁判例に近い事情があれば、裁判所がA子からの養育費分担請求を退ける可能性もあります。

なお、現在、親子法制の改正が検討されており、現行法では夫からしかできない嫡出否認の訴えを、妻や子からもできるように、また、提訴できる期間も子の出生あるいは出生を知ったときから3年とする改正要綱案が示されています。

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