<質問>
破産事件における免責手続について教えてください。免責が認められる場合とそうでない場合、免責されない債務があるのか等お聞かせください。
<回答>
破産手続は、必要最小限度の生活費ともいえる「自由財産」以外の全ての財産を債権者への配当等に充てる手続きです。ただ、破産事件では、配当等に充てる財産は、無いか、あっても僅かです。完済はできません。
法人は破産手続の終了により消滅しますが、個人は、その後の生活のためにも経済的更生を図らねばなりません。そこで、個人破産の場合には、破産手続の配当等で完済できなかった残債務の支払いを免除するために免責手続が設けられています。但し、どんな場合でも全ての残債務の支払いが免除されるものではありません。
破産法252条1項各号は、免責不許可事由を限定して列挙しています。債権者を害する目的で配当財源になるはずの財産を減少させた、購入した物の代金をまだ支払っていないのに(現金を得る等のため)安価で転売した、一部の債権者にだけ弁済した、多額の債務を負った原因が浪費だった、代金を支払う資力が無いのに有るように欺いて物を購入した、破産手続の中で裁判所に虚偽の説明をした等、概して言えば「誠実な債務者」ではない場合、免責が許可されません。
但し、破産法の定める免責不許可事由があっても、裁判所は、破産手続に至った経緯、その他一切の事情を考慮して、裁量により免責許可決定を行なうことがあります。問題があるように見えても、様々な事情から「誠実な債務者」と判断される場合には経済的再生の機会を残しているのです。
また、租税債権、一定の不法行為に基づく損害賠償請求権、養育費等の一定の親族間の義務、あえて裁判所に申告しなかった債権等、破産法253条1項但書に定められた債権は、免責の対象にならず、免責許可決定が確定(決定から約1か月後)しても支払い義務は残ります。
なお、破産しても、戸籍に載ったり選挙権を失ったりすることはありませんし、多くの場合は、仕事を失うこともありません。但し、一定の職業(弁護士、税理士、社会保険労務士、宅地建物取引士、警備員等)については、免責許可決定が確定するまでは、就くことができなくなります。
また、免責の有無にかかわらず、破産手続後5~10年くらいは、金融事故として信用情報機関に登録されるので、ローンやクレジットカードを利用することが非常に困難になります。