「足が冷たくてしびれます」と言う患者様の訴えをよく耳にすることがあります。加齢と共に生活習慣病が悪化し、動脈硬化が進んだり、糖尿病をもつ患者様で足の先まで血液が流れなくなるケースも少なくありません。患者様の足の状態を知るためには定期的に動脈硬化症や糖尿病の検査が必要です。
☆ABI(足関節上腕血圧比)検査
ABI検査とは下肢動脈に狭窄・閉塞がないかを調べる検査で、足首と上腕の血圧を測定し、それぞれの最高血圧である足首収縮期血圧÷上腕収縮期血圧の比率(足関節上腕血圧比ankle brachial pressure index:ABI)を計算することで、血管の狭窄(きょうさく)や閉塞(へいそく)など動脈硬化の進行の程度を推定する検査で、四肢血圧検査ともいわれます。ベッドにあおむけになった状態で左右の上腕と足首の血圧を同時に測定します。正常では足首の血圧が少し高い値となり、この比率が0・9以下の場合には動脈硬化が疑われます。
動脈硬化が進んでいない場合、横になった状態で両腕と両足の血圧を測ると足首の方がやや高い値を示します。しかし、動脈に狭窄や閉塞があるとその部分の血圧は低下します。動脈の狭窄や閉塞は主に下肢の動脈に起きることが多いため、上腕と足首の血圧の比によって狭窄や閉塞の程度が分かります。
☆TBI(足趾上腕血圧比)検査
動脈狭窄や閉塞を疑う時には、第1選択としてABIを行いますが、罹患期間の長い糖尿病や透析患者様の場合、足関節より中枢動脈(心臓に近い血管)の石灰化が著しいため、ABIが本来より高い値となり、実際には狭窄や動脈閉塞があるにもかかわらずABIが基準値の範囲内となり、病変を見逃す可能性があります。そこで、TBI(Toe Brachial Index,足趾上腕血圧比)検査では足趾血管の血圧を測定し石灰化の進行している患者様でも、閉塞性病変の存在を測定することが可能です。
☆ABIやTBIと合わせて行いたいCAVI(心臓足首血管指数)検査
これらは同時に行え、また同じく四肢の動脈硬化を判定できる検査です。
ABI検査と合わせて行うことによって、より詳細に動脈硬化を精査することができます。ABIが「動脈の狭さ」や「動脈のつまり」を判定するのに対して、CAVI(Cardio Ankle Vascular Index)は「動脈硬化の程度」を測定する検査になります。ABIは動脈硬化が生じていても内腔が狭窄していたり閉塞していないと異常値は出ませんが、CAVIは動脈硬化が生じていると異常値が出るために、より早い段階から血管リスクを検出できる検査だと言えます。
CAVIは心臓が拍動してから、その脈波が四肢に到達するまでの時間を測定し、心臓から四肢までの距離に対しての脈波の速度を計測します。速度が速ければ速いほど動脈が固くなっている、つまり動脈硬化が進行していると考えられます。この状態を放置していると脳梗塞や心筋梗塞のリスクとなるため、早い段階から動脈硬化を進行させないような生活習慣の工夫やお薬の投与などが必要となります。
最近の画像診断法の発達により適切な診断が可能となっているため、悪くなる前にバイパス術やカテーテルという管を入れて動脈硬化で狭くなった血管を広げる治療ができ、壊疽にまで至ることは少なくなっています。下肢の冷感が気になるなら血管外科や循環器内科を受診し、ここで紹介した検査を行い、足の動脈硬化のチェックを受けてください。