糖尿病を放置していると全身の血管が障害され様々な合併症が現れます。特に、腎臓は細い血管が集まった臓器なので、血管が少しずつ障害されていきます。 糖尿病患者の約4割が、糖尿病性腎症を合併すると言われています。糖尿病性腎症は、腎臓が障害されて尿にタンパク質が漏れ出す病気で、進行すると腎不全と言う状態になり、最も悪化すると血液透析治療が必要になります。正常な腎臓は血液から老廃物や余分な塩分や水分を取り除き、尿として排出します。しかし、血液中のブドウ糖が異常に増えると、糸球体が徐々に壊され、タンパク質が尿に漏れてきます。さらに進行すると、老廃物を十分取り除けず体内にたまると共に、塩分や水分も十分に排出されなくなり、体内に蓄積されてむくみを発症させます。 ☆糖尿病性腎症の検査―早く発見するには、微量アルブミン尿検査が重要 腎臓の検査では、尿検査と血液検査が行われます。尿検査でタンパク質が出たら、腎臓に障害のあるサインです。さらに、血液検査では、血清クレアチニンを調べます。この2つの検査は、企業や自治体の健康診断でもしばしば行われています。しかし、糖尿病がある場合は、タンパク尿や血清クレアチニンを調べるだけでは不十分です。糖尿病性腎症を早く発見するためには、微量アルブミン尿検査を受ける必要があります。糖尿病のごく初期でもアルブミンが尿中にごく少量漏れてきます。これが微量アルブミン尿で、通常の尿検査ではわかりません。糖尿病と診断されている場合は、3ヵ月に1回、微量アルブミン尿検査を受けることが必要です。しかし、実際には患者さんの30%程度しか検査を受けていません。つまり、糖尿病性腎症を早期発見するためには、定期的にタンパク尿や血清クレアチニンを調べると共に、微量アルブミン尿検査を受けることが大切です。糸球体は一度壊れると元に戻らない、と言われていますので、微量アルブミン尿が出た段階で発見し、すぐ治療を受ければ、尿中にアルブミンが漏れなくなることもあります。つまり、糖尿病性腎症が改善する可能性があります。 ☆糖尿病性腎症の治療 (1)糖尿病性腎症治療で重要なのが、血糖値と血圧のコントロール 糖尿病と診断された直後から血糖値と血圧をコントロールすることで、合併症予防に大きな差が出ます。HbA1c は7%未満に、収縮期血圧は130mmHg未満、拡張期血圧は80mmHg未満に保ちます。高血圧は糸球体に圧力をかけ傷つけます。また、腎臓が塩分や水分を排出できないと、それを補うため腎臓自体が血圧を高めようとします。その悪循環が問題となるため、血圧のコントロールが必要になるわけです。 ①血糖値や血圧をコントロールするためには食事にも注意 まず減塩です。1日の食塩摂取量は6g未満が基本です。また肥満は糖尿病も糖尿病性腎症も悪化させます。 ②生活習慣の改善を行っても血圧が目標に達しない場合は、薬を使って下げる必要 特に、ACE(アンジオテンシン変換酵素阻害薬)やARB(アンジオテンシンⅡ受容体拮抗薬)と言った降圧薬には、腎臓を保護する効果もあるのでよく使われます。 (2)糖尿病性腎症が進行すると専門医による厳格な管理が必要 進行の程度により食事はタンパク質やカリウムを制限し、さらに減塩も厳しくします。タンパク質は老廃物のもとになり、とり過ぎは糸球体に負担をかけます。またカリウムは腎臓の働きが低下すると血液中にたまり、致命的な不整脈につながる場合があります。 今回採り上げた糖尿病の合併症である糖尿病性腎症になると、糖尿病による動脈硬化をますます進行させ、心筋梗塞や脳梗塞と言った重大な病気の発症リスクを増大させます。そのため動脈硬化の進行を抑えると共に、日頃からその予防や治療も大切と言えます。 |
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