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早期発見と治療が大切な、珍しい病気です ―赤ちゃんの二分脊椎―

『二分脊椎とはどんな病気ですか?』と、患者さんに質問されました。二分脊椎とは、赤ちゃんの脊髄の形成に異常が発生することによって生じる先天性の障害で、現在日本では、年間500名から600名が出生しています。

☆二分脊椎はなぜ発症するのでしょうか?
二分脊椎の原因は、妊娠した女性の葉酸の摂取量不足、遺伝や環境、糖尿病や肥満、抗てんかん薬の利用、ビタミンAの過剰摂取などがあるとされています。中でも最多の原因は、葉酸の摂取不足と言われています。

☆二分脊椎には、2つのタイプがあります。
1.顕在性二分脊椎(開放性)
脊椎の異常が表面から見えるタイプで難病指定の対象になっており、出生直後から手術が必要になります。このタイプでみられる脊髄髄膜瘤や脊髄披裂は、人によって様々ですが、背中側の腰から大きなこぶ(脊髄髄膜瘤)のようなものが飛び出ていたり、逆に背中に亀裂(脊髄披裂)のような穴があいているように見えたりします。このタイプでは90%の確率で水頭症を発症します。放置すると、知能障害などを発症してしまう可能性があるので、通常は生後1ヵ月以内にシャント手術が行われます。また、脳内の奇形で脳の異常を起こし、呼吸や飲み込みの障害などを生じることもあります。また幼児期になると、下肢の運動障害、尿意や便意を感じにくいことによる尿・大便失禁などを生じる場合があります。

(診断と検査)
顕在性二分脊椎は、生まれてから診断されることもありますが、妊娠中のエコー検査などで赤ちゃんがお腹の中にいるうちに発見されることもあります。出産前に判明していれば、脊髄髄膜瘤が破れないようにするために帝王切開が行われます。

(治療)
治療は出生後すぐに開始する必要があります。まず、出生後2~3日以内に髄液感染の予防のために脊髄髄膜瘤を閉鎖するための手術を行います。
また、脳脊髄液が脳内に溜まってしまう水頭症に対しては脳室腹腔シャント術という手術を行います。また、欧米では最新の治療として胎児治療も行われています。胎児治療とは、母体の安全を確保しつつ、生まれる前の胎児に治療を行い、生後治療よりも効果の高い治療を行う治療手技です。
日本ではまだ脊髄髄膜瘤の胎児手術を行っている施設はありません。

2.潜在性二分脊椎
もう一つのタイプは脊椎の異常が表面から見えないタイプで「潜在性二分脊椎」と呼ばれます。これは幼児期にはあまり症状が見られませんが、成長期に様々な症状が発生します。この潜在性二分脊椎は難病指定の対象にはなっていません。 このタイプは背中に脊髄髄膜瘤や脊髄披裂を生じませんが、皮膚に多毛、血管腫、母班(色素班)、皮膚表面の小さな穴、たばこによる火傷に見えるような瘢痕(はんこん)、おしりの左右差や臀裂(おしりの割れ目)の歪みなどを生じることがあります。幼児期はあまり症状が見られませんが、成長期(学童期や思春期)に排便障害や、下肢の運動・神経障害(脊髄係留症候群)などの症状が出てくることがあります。これは、脊髄神経が周囲の骨や筋肉とくっついているため、成長によって脊髄神経が引っ張られ障害が起こるためです。

(検査・診断)
潜在性二分脊椎では、出生後に皮膚の異常をきっかけにCTやMRIなどの検査が行われ確診されます。

(治療)
症状の軽減や、悪化の防止のために手術が行われます。症状が出てからでは、手術をしても症状をなくすことができないので、症状が出る前に手術を実施するべきです。また、手術しなくても生命の危険性は少ないと言われていますが、排尿障害から腎臓への障害が出ると生命への危険性も生じてくることもあるので注意しなければいけません。

子供をもつご両親は、もし背中や腰に見慣れない皮膚症状を見つけ不安に思った場合は、子供を診療する脳神経外科医や小児神経科医に診てもらいましょう。

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