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多血小板血漿(PRP)療法が注目されています! ―肉離れや靭帯、腱などの損傷、変形性膝関節症などの治療―

最近、「自己多血小板血漿(PRP)の関節腔内注入療法」が、マスメディアに取り上げられた関係で整形外科への問い合わせが急増しています。多血小板血漿(PRP)治療とは、患者さん自身の血液に含まれる血小板などの血球成分を利用して、ケガや病気で傷ついた組織などの治癒をめざす再生医療で、欧米では、スポーツ選手を中心に一般的な治療法になっています。日本では、2000年代に入ってからスポーツ選手の肉離れや靭帯、腱などの損傷、変形性膝関節症などで注目されてきた治療法です。
変形性膝関節症の膝の痛みに対して、運動療法やダイエット、痛み止め薬の内服などの、次の治療の選択肢として、ヒアルロン酸やステロイド剤などによる関節内注射があります。この関節内注射にもう一つ選択肢として加わったのが多血小板血漿療法だ、と捉えてよいでしょう。

☆多血小板血漿療法(以下PRP療法と言う)とは
自分の血液中に含まれる血小板の成長因子がもつ組織修復能力を利用し、我々に本来備わっている「治る力」を高め、治癒をめざす治療で、変形性膝関節症、半月板損傷で損傷組織の治癒を促進します。
私たちの血液は、血球(赤血球・白血球・血小板)と血漿で構成されています。
血液中の血小板には組織修復を促進する様々な成長因子、サイトカインなどの分子が多く含まれており、これらの分子が周囲の細胞に働きかけ、損傷した組織を修復し、痛みを取り除きます。

☆自己多血小板血漿注入療法の概要
ご自身の血液を約10ml採取し、特殊な精製キットを使用して遠心分離し、血液中にある血小板のみを精製し、血小板濃度を通常の血液の約3~7倍に高く濃縮した自己多血小板血漿を作製し、これを膝関節包内に注入します。

☆自由診療下のPRP療法と法的安全対策
PRP療法は、現在のところ保険診療としては認められておらず、自由診療で行われています。一方、自分の血液を使うことから、比較的安全性の高い再生医療と言えます。2014年に施行された『再生医療等の安全性確保等に関する法律』の規制の枠組みに組み込まれ、PRP療法を行う際には、病院等の実施施設は厚生労働省に届け出が義務付けられています。

☆治療上の安全性と注意点について
患者様ご自身の血液から作成しますので、肝炎などのウイルス感染の危険性がなく、極めて安全性の高い治療です。しかし、まだ十分なエビデンス(医学的根拠)が確立されているとは言えず、臨床経験則に基づいた治療である内容から、治療効果には部位差や個人差があります。但し、ステロイド等の薬剤を使用せず、ご自身の血液のみを用いた治療であるため、大きな副作用は生じ得ないという点で、他の治療での難治例には検討の価値があると言えます。

☆PRP療法の普及
PRP療法の質の向上と言う点で、日本で初めて閉鎖式の血液成分分離キットが、臨床での使用が可能な医療機器として製造販売承認され、2016年に発売されました。閉鎖式で、安全に、なおかつ多くの施設で再現性をもって必要な成分が分離・抽出できると言うのは、PRP療法の普及にとって非常に大事なことです。

☆最後に
膝の痛みに対しては、現在人工関節への置換を含めて、様々な治療法が確立されており、従来の標準的な治療法で十分症状の改善が期待できます。
又、ひざの痛みの原因は、患者さんによって様々ですから、個別の病態に適した治療を選択することが何よりも重要なことです。安易にPRP治療を選ばず、整形外科の膝関節専門医に相談され、よりよい結果が期待できる治療法を選択していただきたい、と思います。

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