最近、当院外来の患者さんに漢方薬を処方したところ、特に有効であったお薬を紹介します。 1.抑肝散(よくかんさん) (1)不眠症を改善する。 抑肝散は、神経の高ぶりを落ち着かせ、筋肉のこわばりを弛めるリラックス効果があります。日頃から精神的ストレスに耐えている、イライラしやすい、怒りっぽい方に使われます。また、認知症の方や育児に奮闘するお母さん方のストレスによるイライラや不眠にもよく使われています。 (2)認知症の『BPSD』を改善する。 抑肝散で、認知症の『BPSD』(興奮や攻撃性、異常行動、睡眠障害といった症状)が落ち着くとのレポートもあり、認知症によって出現している神経の高ぶりを抑える目的で処方されます。さらに最近では幻視といった症状にも効果があり、アルツハイマー型認知症やレビー小体型認知症などに処方されています。 ☆抑肝散の副作用とは (1)胃腸症状がみられることもある。 嘔気、食欲低下などの胃腸症状が出やすいとされています。西洋薬と違って漢方薬は慣れてくることが多いのですが、もともと胃腸が虚弱な方やちょっとしたことで食欲低下、嘔吐などがみられる人は注意が必要です。 (2)肝障害、発疹などの報告もある。 (3)偽アルドステロン症が出ることもある。 甘草という成分をとりすぎると腎臓での電解質のバランスが崩れ、全身倦怠感、血圧上昇、全身のむくみ、体重増加、手足のしびれ、痛み、筋肉のぴくつきやふるえ、手足に力が入らないといった症状が出ます。基本的には漢方のため急に中断してもあまり変化は出てきません。内服後から調子がおかしいと思った場合にはすぐにやめましょう。 2.麻黄湯(まおうとう) インフルエンザによく使われる漢方薬です。その他ゾクゾクしてふるえるほどのひどい寒気と発熱、節々が痛んで、筋肉痛がするようなときに効果的です。 ☆麻黄湯の副作用とは 体質的に麻黄湯が合わない方が服用した場合、胃の調子が悪くなったり、動悸がしたり、眠れない、汗が出過ぎて脱水状態になり足がつりやすくなります。ちなみに、脱水状態になると、足がつりやすくなります。ただでさえ、発熱時は水分が足りない状態になりがちです。冷た過ぎない水分をこまめに補給するようにしましょう。 3.大黄甘草湯(だいおうかんぞうとう) 大黄甘草湯は、腸の運動が鈍くなって起きる弛緩性便秘に効果的です。効果は大黄と甘草という2つの生薬が働くからです。 大黄は大腸の運動を活発にし、便意を起こします。他の薬剤(コーラック等)ほど刺激は強くなく、緩やかに自然に近い排便を促していきます。しかし下痢と便秘を繰り返す痙攣性便秘や直腸内に固い便が溜まっている直腸性便秘に対してはあまり効果はありません。 大黄が大腸を刺激しお腹が痛くなることもあるのに対し、甘草が腹痛、排便痛を抑える働きをします。 ☆大黄甘草湯の副作用とは (1)胃腸症状がみられる。 胃の不快感、食欲不振、吐き気、腹痛、下痢が出ることもある。 (2)大黄と甘草が体に合わない場合には皮膚の発疹、発赤、かゆみ、刺激感、むくみ、体のだるさ、手足のしびれなどが起こる場合がある。 (3)偽アルドステロン症が出ることもある。 尿量が減少する、顔や手足がむくむ、まぶたが重くなる、手がこわばる、などの症状を起こすことがある。 (4)ミオパチー症状が発症する。 体がだるくて手足に力が入らない、手足がひきつる、手足がしびれる、などの副作用がでることもある 以上当院の処方で有効と思われる漢方薬について述べました。特に、その副作用はすべてを記載したものではなく、気になる症状が出た場合には、医師または薬剤師にご相談下さい。 |
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