午後になるとまぶたが重い、頭が重い、肩こりを強く感じることがありませんか?上まぶたが下がってしまい、視界などに影響を感じることがあったら、あなたは「眼瞼下垂症」かもしれません。「眼瞼下垂症」は上まぶたが下がってしまい、視界などに影響を及ぼす、まぶたの病気です。
☆まぶたを上げる仕組み
上まぶたは、主に上眼瞼挙筋の収縮によって上がります。上眼瞼挙筋は、途中から薄い膜状の腱膜となり、まぶたの先端部分にある瞼板という板状の組織に付着しています。上眼瞼挙筋が収縮すると、腱膜に引っ張られるようにして瞼板が持ち上がり、まぶたが開きます。また、腱膜の後ろ側にはミュラー筋という筋があり、交感神経の刺激で収縮しまぶたを開きます。
☆後天性眼瞼下垂症の種類
後天性の眼瞼下垂症は、主に以下の様に分類されます。
①腱膜性眼瞼下垂 後天性のほとんどが、腱膜性による眼瞼下垂に当たります。
②動眼神経麻痺、重症筋無力症、ホンネル症候群のように、まれに神経の異常によって眼瞼下垂が起こることもあります。
☆腱膜性眼瞼下垂症
後天性のほとんどが、この腱膜性眼瞼下垂に当たります。腱膜が薄く伸びてしまうと、上眼瞼挙筋の収縮は腱膜ではなくミュラー筋を介して交感神経を緊張させてミュラー筋を収縮させまぶたを開けられますが、食後などに交感神経の緊張が低下すると開けられません。さらに病態が進むとミュラー筋も伸びてしまい、いつもまぶたが垂れ下がるようになります。
腱膜性眼瞼下垂症は、①老人性眼瞼下垂と呼ばれ、挙筋腱膜が薄くなって起こります。原因として最も多いのが、この腱膜の異常です。腱膜は、加齢と共に伸び、個人差はありますが、高齢になると誰でも多少は両側の上まぶたが下がってきます。②ハードコンタクトレンズを長年使用している人にも起こります。硬いレンズを装着していると、上まぶたの内側から力が加わり、腱膜に負担がかかるためです。また、③まぶたを頻繁にこすると腱膜と瞼板のつながりがゆるみやすくなるので、若くても花粉症やアトピー性皮膚炎の人、逆さまつげの人、アイメークをよくする人も腱膜性眼瞼下垂症になりやすい傾向があります。目をよくこする癖がある人も、上まぶたの外側から力が加わって負担がかかるため、眼瞼下垂が生じやすくなるといわれています。
☆後天性眼瞼下垂症の手術
症状が強く、生活に支障のある場合は、手術を検討します。但し、緊急を要する手術というわけではありません。医師の説明をよく聞いて、手術のメリット、デメリットを十分に理解したうえで、手術を受けるかどうか決めることが大切です。
①腱膜縫縮術 上まぶたの皮膚を切開し、伸びた腱膜を縫い縮める手術です。局所麻酔で行うことができ、1~2泊程度の入院で済みます。日帰り手術も可能です。
②前頭筋つり上げ術 上まぶたの筋力が弱かったり動きが悪いタイプの眼瞼下垂に対し、前頭筋というおでこの筋肉を利用して、上まぶたをつりあげる手術です。局所麻酔で行われ、1~2泊程度の入院で済みます。日帰り手術も可能です。
☆手術をしてはいけない場合
他の病気が原因で眼瞼下垂が起きている場合があり、手術の効果が全く得られなかったり、手術で逆に眼瞼下垂が悪化してしまうこともあるので、注意が必要です。手術をしてはいけないのは、次のような場合です。
■「筋無力症」が原因の場合
「筋無力症」は、自己免疫疾患です。眼科や神経内科を早めに受診することが必要です。「筋無力症」では、ステロイド薬を用いて全身的な治療をします。
■脳卒中・糖尿病が原因の場合
脳卒中や糖尿病で目を動かす神経が麻痺すると、眼瞼下垂を招くことがあります。命に危険が及ぶこともあるので、必ず脳神経外科などを受診しましょう。
■「眼瞼けいれん」の場合
「眼瞼けいれん」は、光がまぶしく感じられ、思わず目を閉じてしまうまぶたの病気で、眼瞼下垂と間違われやすい病気です。
以上、今回は比較的高齢者に多い眼瞼下垂症について述べました。思い当たる方は、かかりつけの医師にご相談下さい。