ノロウイルスは、温度が低いほど長く生存でき、4℃で1~2週間安定して生存しています。家庭の冷凍庫(マイナス18℃以下)でも生存でき、冷凍保存した食品による食中毒が起きる場合もあります。ですからノロウイルスによる感染症は、グラフの通り、特に11月から3月に多発します。
また、症状が治まってからも約2週間は、便と共にウイルスが排泄されることにも注意が必要です。治ったように見えても約2週間は二次感染が起こる可能性があるのです。
☆ノロウイルスによる感染症の症状
ノロウイルスは、食品や人の手などを介して体内に入り、腸管で増殖します。感染してから1~2日ほどの潜伏期間を経て、強い吐き気、嘔吐、下痢、腹痛などを起こします。発熱、頭痛、筋肉痛などを伴うこともあります。
しかし、これらの症状は長くは続かず、2~3日で自然に回復することがほとんどです。ただし、乳幼児や高齢者などが感染すると重症化することがあります。
☆感染経路
感染経路は、「飲食物からの感染(食中毒)」と「人からの感染」の2つに大別できます。
1飲食物からの感染では、カキなどの二枚貝が原因となることが知られていますが、最近は減少傾向にあります。
2人から人への感染には、次の3種類があります。
①経口感染
感染者の便や嘔吐物に触れた手を介して口から体内に入る。
②飛沫感染
吐いたときなどにウイルスを含む飛沫が飛び散り、その飛沫を吸い込む。
③空気感染
適切に処理されなかった嘔吐物が乾燥し、舞い上がって空中を浮遊するウイルスを吸い込む。
☆治療
ノロウイルスを死滅させる抗ウイルス薬はないので、対症療法が中心です。
①症状が軽い場合は、自宅で安静にします。
②嘔吐がある場合には、吐き気止めの坐薬を使い、吐き気が治まってきたら、水分・塩分を少量ずつこまめに補給して、脱水症状を起こさないように気をつけます。ほとんど、嘔吐は半日~1日で治まります。嘔吐が続く間は、食事を無理にとる必要はありません。
③下痢止めは使わないようにします。
下痢止めは腸の動きを弱めるので、ノロウイルスが排出されにくくなり、症状が長引く可能性があります。
④嘔吐が2日以上続くなど症状が強かったり、脱水の進行が疑われるときは医療機関で点滴治療が必要です。
☆感染しないために
(1)丹念な手洗いが必要です。
時間をかけて、手指の隅々まで丁寧に洗います。特に、指先、指の間、爪の間、手首などは見逃しやすいので、洗い残しがないように気をつけましょう。
アルコールやせっけん、中性洗剤などは、汚れと共にノロウイルスを落としやすくする役割はありますが、殺傷効果は期待できません。過信せずに丹念に洗い流してください。
(2)身近に感染者がいる場合は、その嘔吐物の適切な処理が大切です。床などに嘔吐したときは、使い捨てのマスクや手袋などを着用し、ペーパータオルで拭き取った後、家庭用の塩素系漂白剤などで消毒します。拭き取った嘔吐物や手袋などはポリ袋に密閉して捨てます。
(3)ノロウイルスは60℃30分の加熱では感染性は失われず、85℃以上1分間以上の加熱によって感染性を失うため、カキなどの食品は中心部まで充分加熱することが重要です。生のカキを調理した包丁やまな板、食器などを、そのまま生野菜など生食するものに用いないよう、調理器具をよく洗浄・塩素系漂白剤による消毒をすることも大事です。
☆どれ位休めばよいか
ノロウイルスによる嘔吐や下痢の症状は平均で1~2日で治まります。しかし、ウイルスは症状が治まってからも、1~2週間は腸で生き続けます。また、患者さんから他の方に感染する二次感染は、ウイルスを含む嘔吐物や便からの汚染です。回復した後は、嘔吐することはなく、嘔吐物からの二次感染は考えられません。また、下痢がひどくなければ飛沫感染は考えにくく排便後に手洗いをしっかりすれば、問題はないと思います。つまり、症状が治まれば他の方への二次感染の可能性はかなり低く、1~2週間も休む必要はないと思われます。