妊娠していることに気づかず薬を服用してしまった、〝医師から薬を出されたけど、妊娠中の服用はおなかの赤ちゃんに大丈夫だろうか?、と気になる妊婦の方も多いかと思います。
☆妊婦が不用意に薬を服用することにより、赤ちゃんに奇形が起こる可能性がある。
胎児の形成、発育に対して奇形を引き起こす物質を含んだ薬を服用した場合、奇形が起こる可能性があることが最大の問題点です(服用したら必ず奇形が起こる訳ではないが)。奇形をもたらすとされる時期は、母体の妊娠4~13週(特に4~8週)とされています。また妊娠が進むにつれて、薬による胎児への影響は低くなる、と言われています。
☆妊婦が服用する頻度が高い、感冒、インフルエンザ、気管支喘息の薬について
1感冒薬(かぜ薬)
PL顆粒など かぜに用いる薬に危険度の高い薬は少なく、妊娠中にどうしても必要な場合は、必要最小限にして用いることができます。また、妊娠に気づかず偶発的に服用していたとしても、悩むこともないでしょう。但し、かぜ薬には解熱・鎮痛薬や抗ヒスタミン薬が配合されているので、安易な服用は好ましくありません。かかりつけ医に確認してください。妊娠初期の服用と後期の長期連用は、避けたほうが無難です。
2インフルエンザ治療薬
①妊婦がインフルエンザに感染すると、発熱によって胎児も先天性障害や早産のリスクにさらされることになります。このようなリスクを回避するためには、インフルエンザ治療薬による薬物治療が有用です。
②オセルタミビル(タミフル)とザナミビル(リレンザ)は、抗インフルエンザウイルス薬の新薬です。動物実験で特段の催奇形性作用は認められていませんし、人での催奇形にかかわる報告も今のところないようです。はっきりしたことは分かっていませんが、危険性は低いと考えられています。
③アメリカでは、新型インフルエンザA(H1N1)ウイルスに感染した妊婦に対し、発症から48時間以内に抗ウイルス薬による治療を開始すること、また感染者と接触した妊婦に対しては10日間の予防的投薬を勧めています。
3喘息治療薬
喘息の激しい発作は、血液中の酸素不足を招き、赤ちゃんの脳の働きを悪くしてしまう恐れがあります。そのため、妊娠中も発作を予防する薬を続ける必要があります。さらにより良い状態の妊娠とするには、妊婦の喘息症状のコントロールと緊急事態の回避が必須となります。
妊婦に安全に使用できる喘息治療薬の一例として
①吸入ステロイドのプロピオン酸ベクロメサゾンは安全。
②経口ステロイド薬のプレドニゾロン、メチルプレドニゾロンは安全。
③テオフイリン薬は血中濃度を測定し、通常よりやや低めの8~12μg/mlを維持量とする。
④吸入ベータ刺激薬は一般に妊娠中は安全であると考えられている。但し、ベータ刺激薬の全身投与は出産を抑制したり遅延させたりするので、分娩近くには避けるべきです。
☆妊娠中に妊婦が薬を服用する際の原則
おなかの赤ちゃんへの悪い影響を避ける為にも、妊娠中は自己判断での薬の服用は避け、産婦人科の医師もしくはかかりつけの医師に相談し、妊娠中であることを考慮された薬を処方してもらいましょう。薬の副作用が気になる場合は、医師又は薬剤師に尋ね、納得できたら必要以上に怖がらず、処方された薬の用法、用量を守って正しく内服しましょう。