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一人でも多くの心房細動患者さんを脳梗塞から守るために

8年前、長嶋茂雄さんに起こった出来事が思い出されます。幸いにも長嶋さんは、社会復帰されましたが、心房細動を無治療で放置していると、心臓の中で血栓ができ、その血栓が脳に流れ脳梗塞に繋がることがあります。

心房細動ってどんな病気なの?
 心房細動は高齢者でよくみられ、心房が不規則で非常に速いリズムで拍動する不整脈です。左心房全体が小刻みに震え正しい収縮と弛緩ができなくなるため、左心房内の血液がよどみ、血栓が形成されやすくなります。この血栓が剥がれ、血流によって脳に運ばれ血管に詰まると、脳梗塞を起こします。

心房細動の原因
心房細動の原因としては、次のようなものがあげられます。
☆高血圧…血圧が高い状態が続くと、心臓の筋肉(心筋)が厚くなります。それが心房に負担をかけるため、心房細動が起こりやすくなります。
☆心臓病…「心筋梗塞」「弁膜症」「心筋症」などの病気も、心房に負担をかけ、心房細動を起こりやすくします。
☆甲状腺機能亢進症…甲状腺ホルモンには、心臓を強く収縮させたり、拍動を速くさせる働きがあります。甲状腺ホルモンが増え心臓に対する作用が過剰になると、心房細動が起こりやすくなります。

心房細動への対処
(1)原因疾患への対処
 心房細動への対処では、まず何が原因となっているのかを調べる必要があります。原因となっている何らかの病気が見つかった場合には、その病気の治療を行います。
(2)原因となっている病気が明らかでない場合や原因となっている病気への対処をしても改善しない場合の対処
次のような薬物療法が行われます。
①レート治療薬(心拍数コントロール)
 心房細動中は心拍数が120~150/分程度と、極めて速くなることが多く、動悸を感じたり、心臓がくたびれてポンプ機能が低下したりします。そこで、心拍数を抑える薬を使います。心房細動そのものの根治を目指す治療ではなく、頻脈を抑えドキドキ感をとるための治療です。
②抗不整脈薬(調律コントロール)
 これは心房細動を止めて心臓のリズムを正常に戻し、そして調律を維持することを目標とする治療です。薬(抗不整脈薬)を内服あるいは注射で用いるのが一般的ですが、これには限界があり、薬剤の投与では洞調律を維持できないことがしばしばあります。
③抗凝固療法
 心房の中で血液が固まって血栓を形成してしまうのを防ぐ治療です。ワルファリンという薬を内服して血が固まりにくい状態にします。定期的に血液検査を行い薬の効果をチェックして服薬量を調節します。
(3)薬物療法の効果が不十分または長期の薬物療法を希望しない場合の対処
 「カテーテル・アブレーション」という治療が行われることがあります。これは、不整脈の原因となっている心臓内の部位を高周波電流で焼灼する治療です。1990年代後半から行われ始め、近年めざましく発展しており、心房細動を根治し洞調律を維持できるようになってきました。 ただし、「カテーテル・アブレーション」は、すべての患者さんに有効なわけではありません。心房細動が長く続いている人や、心房が大きくなっている人は、たとえ治療を受けても完治が難しいといえます。

脳出血のリスクが少ない抗凝固薬が登場
 従来、心房細動から起こる脳梗塞の予防のための抗凝固薬としては、ワルファリンが使われてきました。ただ、ワルファリンは、採血による血液凝固能のモニタリングが必要で、少し煩わしい面があります。今年、「ダビガトラン」という新しい抗凝固薬が承認されました。「ダビガトラン」は、ワルファリンと同等以上の脳梗塞の予防効果をもち、さらに血液凝固能のモニタリングが厳密には必要でないため採血のストレスがありません。心房細動の人にとっては、朗報です。

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