今まで狭心症の原因となる冠動脈の狭窄を発見するために、直接手足の動脈からカテーテル(管)を入れていく心臓カテーテル検査が行われてきました。しかし、最近、マルチスライスCTが開発され、心臓カテーテル検査に代わって、外来における狭心症判定のための有力な検査となってきています。今までなら、入院してまで、と検査に踏み切れなかった人の冠動脈検査が外来で容易にできるようになりました。
外来の約15分の検査で冠動脈の大体の形状が判るようになったのは画期的なことです。
ただ、現在普及しているマルチスライスCTの性能では、冠動脈壁に石灰化が強いところでは判定が難しくなります。心拍数が遅すぎたり速すぎたりすると、それだけで良い画像が撮れなくなってしまいます。脈が速すぎる人や、不整脈の多い人には薬剤の投与が必要です。不整脈によっては検査をできないこともあります。
極めて高性能なマルチスライスCTもあります
日本に数台しかない高性能マルチスライスCTは、脈を遅くするベータ遮断薬という薬を事前に服用する必要が全くなく、どんな不整脈があっても関係なく、正確に冠動脈の狭窄度を検出することができます。また、検査時間も5~7秒で、検査後の解析時間も10分以内と短縮されています。また造影剤がなくてもある程度冠動脈の状態が把握できるため、病変の有無だけの判断には造影剤を用いない単純CTとしても使用でき、造影剤アレルギーがある人にも検査を行うことができます。
冠動脈検査による被爆量を減らす努力も進んでいます
心臓CT検査はX線を使うため、放射線被曝が避けられません。被曝線量は1回10ミリシーベルトを超える場合が多い。(冠動脈カテーテル検査では、5ミリシーベルト程度)
新しい技術の導入で、心臓CTによる被曝を大幅に減らす試みも始まっています。従来の方式で撮影した場合は、被曝線量が平均12.5ミリシーベルトであったが、新しい技術を使うと、平均1.7ミリシーベルトと、8割以上減り、患者によっては1ミリシーベルト以下にもなるようです。心臓全体の状態を診る場合でも2~3ミリシーベルトに、狭い冠動脈の状態を診るだけなら、0.25~0.5ミリシーベルトになるといいます。
最後に、心臓CT検査は全国の大学病院や循環器内科がある主要な病院などに広く普及していますが、設置されているCTの性能や検査の実施数はまちまちです。医療機関によってはホームページで検査の方法や費用などを説明している所もあります。機会があれば参考のためご覧になってみてください。