「遺伝だから」と諦めていたAGAの患者さんが、専門医の治療で、髪が増えてうれしいと知らせてくれました。最近の増毛治療は非常に進んでいます。
★男性型脱毛症(AGA)の起こるしくみ
AGAの原因となるのはDHT(ジヒドロテストステロン)という物質で、テストステロンという男性ホルモンが5-αリダクターゼ(5-α還元酵素)という酵素の還元作用によって変化した一種の活性型男性ホルモンです。毛乳頭や皮脂腺で、テストステロンがDHTに変化すると毛根は細胞分裂を止めてしまい、次に生える髪の毛は充分に育ちません。AGAになると、DHTの作用で抜け毛のサイクルも短くなり、髪の毛も細く短いままうぶ毛のような状態になります。
★AGAは遺伝によるかどうか
母方の祖父がハゲているとしたら、自分も将来、男性型脱毛症が発症する可能性がある、と一般的に思われています。 男性型脱毛症の遺伝に関して『朝日新聞』(’05.6.14付け)に以下の記事が掲載されています。ドイツ・ボン大学の研究チームが「ハゲの遺伝子」の有力候補の一つを発見し、米国専門誌アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス7月号(電子版)に発表しました。「ハゲは遺伝する」と経験的には知られているが、どの遺伝子が原因なのか、詳細は分かっていません。研究チームは、40歳以前にハゲ始めた男性のいる家系の血液を分析してみました。その結果、若くしてハゲ始めた人は、X染色体にある男性ホルモン(アンドロゲン)の受容体遺伝子に変異が目立つことが分かりました。研究チームは「遺伝子変異のため頭皮でアンドロゲンの働きが強まって、髪の毛が抜けやすくなるのではないか」とみています。男性はXとYの二つの染色体をもち、X染色体は母親から受け継ぐため、母方の祖父がハゲていれば、自分もハゲる可能性があります。ただ、研究チームは「ほかにもハゲの遺伝子があると思われるので、一概には言い切れない」としています。
★プロペシアによる内服治療
(プロペシアとは)
プロペシアとは米国医薬品メーカー、メルク社が開発した世界初の内服する育毛剤のことです。 AGAは、男性ホルモンであるテストステロンが5-αリダクターゼと結びつくことが、直接的な原因ですから、5-αリダクターゼの働きを抑えれば、脱毛の原因となるDHTの生産も抑制されるのです。プロペシアのフィナステリドという成分は、この5-αリダクターゼという酵素の働きを抑える効果があり、AGAの進行を防ぐといわれています。
(プロペシアの治療方法の実際)
プルペシアは限られた専門外来を持つ医療機関での処方となります。錠剤で1日1回(1mg)の服用が基本とされています。プロペシアを毎日服用し、半年程度続けながら様子をみることになるでしょう。効果には個人差があります。また、AGA治療は保険適用外で全額自己負担です。
(プロペシアの安全性)
プロペシアは認可されている治療薬ですが、まったく、副作用が無いとは言えません。
プロペシアは男性用だということに注意しましょう。女性や子供は服用はもちろんのこと、接触も避けなければなりません。とくに妊娠中か、その可能性のある女性は、絶対にプロペシアを使用してはいけないだけでは無く、砕けたり割れたりしたプロペシアの錠剤をさわってもいけません。もし、男子を妊娠している女性の体内にプロペシアの有効成分が入ると、男子の生殖器に異常を起こすおそれがあるからです。専門医の指示の下、正しく服用するようにしましょう。