一般に、痔であることが確認されたら、生活改善と薬の使用による保存療法を行います。保存療法を続けても改善がみられない場合には、外科的療法が行われます。
☆腫れて激しく痛む痔核の症例
腫れ上がって激しく痛むのは次の様な痔核です。まずは安静にして、患部を温めて血行をよくしたり軟膏や座薬などの薬を使ったりして、腫れをひかせることが第一です。腫れ上がって大きく脱出しているように見えても、腫れがひいたら痔核自体は小さかったというケースもあります。
(1)血栓性痔核
肛門のまわりにあずき大の黒っぽい硬いイボができて、ズキズキと激しい痛みを起こします。これは、静脈で血が固まって血栓ができた状態。特に前兆やきっかけがなく、突然起こることもあります。座るのも辛いほど激痛に襲われますが、座薬や軟膏などを使い患部を温めます。数日間で痛みは和らぎ、1ヶ月ほどで血栓は吸収されてなくなります。
(2)嵌頓(かんとん)痔核
内痔核と外痔核が腫れ上がり、もとに戻らなくなって、泣き叫びたくなるほどの激痛があります。座薬や軟膏などを使い、患部を温めることで、1~2週間で痛みや腫れが治まります。腫れがひいても、痔核自体はなくなりません。痛みや腫れが治まってから、その後の治療を判断します。
☆腫れて痛む内痔核に対する
最新治療情報
(1)ジオン注射(ALTA注射)
平成17年3月、ジオンは内痔核硬化療法剤として発売されました。痔核に硬化剤ジオン(主成分:硫酸アルミニウムカリウム、タンニン酸)を、注射することで、内痔核を縮小させる治療法です。
痛みや出血がほとんどなく、かなり大きな痔核でも翌日から脱出がなくなります。短期間の入院(最近では外来通院)だけで治療できます。新しい治療法のため特殊な投与技術が必要であり、決められた手技講習会を受講した専門医しか実施できず、まだ実施していない医療機関もあります。
(2)痔の相談ができる病院の探し方
普段なかなか馴染みのない診療科かもしれませんが、痔の治療を受けるなら、やはり肛門科の専門医に相談するのがベストです。 最近は、女性でも訪れやすい、温かい雰囲気の肛門科が増えています。自分で肛門科医を見つけられなければ、かかりつけの医師に紹介してもらうのも、ひとつの手です。あなたの家の近くで痔の相談ができる施設を探す場合には、次のホームページを活用してみてはいかがでしょうか?
内痔核治療法研究会ホームページ(http://www.zinjection.net/)
内痔核の治療法に関する研究や知識・技術の普及を目指して設立された研究会のホームページです。
☆『温水便座症候群』にご注意
最近、患者さんから『清潔好きで温水洗浄便座を使っているのに痔が良くなりません。なぜですか?』と聞かれました。排便後、温水洗浄便座を使っても痔は良くなりません。使い過ぎますと、かえって肛門周囲の皮膚炎を起こしたり、浣腸作用を起こしたりします。このような状態を私たちは、10年以上前から『温水便座症候群』と呼んで注意を促しています。
痔を防ぐにはお尻を清潔に保つことが大切ですが、温水洗浄便座で洗い過ぎるのはNG。特に、きれいにしようと思って肛門の中まで水を入れている人は、今すぐやめてください。かえって不潔になって、ただれやかゆみを起こす原因になってしまいます。また、紙で強く拭き過ぎるのも、肛門に負担をかけます。肛門の皮膚は、唇と同じくらいデリケート。温水洗浄便座を使うのは5秒以内にとどめて、あとは水気をさっと拭く程度にしましょう。