病院の診察室で測ると、緊張して血圧が高めになる高血圧を「白衣高血圧」と呼んだりします。一方診察時は正常であるが、日常血圧が高い人が多くみられます。これが「仮面高血圧」です。高血圧の人が心血管疾患を発症する比率は、血圧が正常である人達の2倍と言われます。本当は高血圧なのに、医師に診てもらう時に限って、血圧が下がり、一見正常にみえる「仮面高血圧」、これを放置しておくと、心筋梗塞や脳卒中など、心血管疾患が発症する危険性が高くなります。「仮面高血圧」は、「白衣高血圧」や普通の高血圧の人達よりやっかいです。
1.「仮面高血圧」は次のように分類できます。
(1)早朝高血圧
①早朝急上昇型
②夜間高血圧型
(2)職場高血圧
1)早朝高血圧/起床後の血圧が高めになる
早朝高血圧は、血圧が夜間に一旦下がるものの、早朝に急上昇する早朝急上昇型と、血圧が夜間も高いままの夜間高血圧型の2タイプがあります。早朝高血圧は、心筋梗塞や脳卒中などを発症する危険性が特に高いことで知られています。昔から、心筋梗塞や脳卒中は午前中、それも10時頃が発生のピークと言われていますが、その背景には早朝高血圧が存在しているようなのです。
①早朝急上昇型
睡眠中の血圧は正常だが、朝目覚める前後に血圧が急上昇する。早朝の昇圧には、自律神経の切り替えが関係しています。誰でも夜間はリラックス神経である副交感神経が優位となり、血圧は下降傾向になりますが、起床後は、活動神経である交感神経の働きが活発となり、血圧が上昇します。
②夜間高血圧型
血圧が高い状態が睡眠中から朝まで続き、その後正常血圧に戻ります。夜間高血圧で夜間に突然死が起こるリスクは、通常の高血圧に比べ約2倍高いといわれます。通常であれば、夜になり交感神経から副交感神経へ切り換われば、血管が拡張しますが、動脈硬化が進行していると、自律神経のモード変更程度では、血管が十分に拡がらないのです。
2)職場高血圧/ストレスや疲れなどが原因となる
昼間、仕事による精神的なストレスに疲れなどが重なることで、血圧が上がります。
医療機関で測るときには、仕事から解放されるため、血圧が低くなるのです。職場に限らず、家庭でも同じように血圧が上がることがあります。この場合は、育児や家事などによるストレスが原因と考えられます。
2.重要なのは「病院血圧」ではなく個々で測る「家庭血圧」
「白衣高血圧」の場合でも、「病院血圧」だけで判断すると、必要以上に強い降圧薬を医者が処方してしまう危険性があります。一方、「仮面高血圧」で一番怖いのは早朝に血圧が高くなる早朝高血圧です。24時間効くはずの降圧薬を処方されていても、早朝には薬が効かなくなり、血圧が上がっている場合もあります。「病院血圧」による判断で処方され、降圧薬を飲んでいるからと安心していたら、早朝高血圧のせいで動脈硬化が静かに進行していたということも十分に考えられるのです。
重要なのは自己測定による「家庭血圧」なのです。自己測定の結果、早朝の血圧が135/85以上であった場合、「仮面(早朝)高血圧」である可能性があります。躊躇せず、すぐに病院を受診しましょう。
日頃から家庭で血圧を測る習慣をつけ、自分の血圧の状態を把握しておくことが大切です。血圧は自己管理の時代に入ったのです。