寒いこの頃、外来では特に老人の皮膚のかゆみを訴える方が増えてきます。乾燥肌です。冬は空気が乾燥し、体の新陳代謝が低下するため、誰でも肌が乾燥しやすくなります。乾燥肌やそれに伴うかゆみなどの肌のトラブルには、入浴、暖房、食生活といった生活習慣が影響していることが多いのです。しかし、問題のある生活習慣を改めていくことで、乾燥肌を改善・予防することができます。
1、入浴時の注意
●熱い湯や長湯は避ける
熱い湯に入ったり、長湯をすると皮膚を覆っている皮脂膜や、角質層の角質細胞間脂質が湯の中に溶け出し、皮膚の保湿機能が低下してしまうからです。
●石鹸を使い過ぎない
石鹸の使い過ぎにも注意しましょう。保湿機能を担っている皮脂膜や角質細胞間脂質が、石鹸によって奪い取られてしまうからです。液体のボディシャンプーは、洗浄力が強過ぎるので避けたほうがいいでしょう。
●ゴシゴシ洗わない
タオルなどでゴシゴシとこするのもよくありません。皮脂膜はもちろん、角質層もはがれてしまうため、皮膚の保湿機能やバリア機能を低下させてしまうからです。
●イオウ入りの入浴剤は乾燥肌の原因に
入浴剤では、イオウの入っているものに注意が必要です。イオウには角質層を破壊する働きがあり、皮膚を乾燥しやすい状態にしてしまいます。 2、入浴後の注意ー保湿剤で水分を閉じ込める
入浴後は、バスタオルで押さえるようにして体についている水分をふき取ります。やはり、ゴシゴシこするのはよくありません。体をふき終わったら、皮膚がしっとりしているうちに保湿剤を塗るようにします。入浴直後の皮膚は水分を吸い込んでいるので、それが蒸発する前に、保湿剤を塗って皮膚に水分がとどまるようにするのです。
3、暖房 暖房器具は使い過ぎず加湿に心がける
暖房は空気を乾燥させます。そのため、暖房のきいた部屋にいると、皮膚から蒸発する水分が多くなり、皮膚を乾燥させてしまいます。
4、食生活
辛い食べ物はかゆみを引き起こすので、食べ過ぎないようにします。アルコール飲料も、やはりかゆみを増す原因となります。血液循環がよくなって体が温まると、神経の伝達速度が速くなってかゆみが増すのです。
5、乾燥肌の日常治療
(1)保湿剤を塗ることが基本
保湿剤で皮膚の表面に人工的な膜をつくると、外部からの異物の侵入を防ぐと共に、皮膚の内側から水分が蒸発するのを防ぐこともできます。また、保湿剤による治療を続けることで、角質層のバリア機能が回復し、皮膚の乾燥を防ぎます。
(2)かゆみがひどい場合は抗ヒス タミン薬を
保湿剤だけでよくならず、かゆみがひどい場合には、かゆみを抑えるために「抗ヒスタミン薬」を内服します。さらに悪化した場合には、炎症を抑えるための「ステロイド薬」の外用治療を追加します。
(3)かゆみが改善しない場合は、皮膚科受診を
乾燥肌の治療は、保湿剤を塗るスキンケアで症状が抑えられていれば、それだけでもいいでしょう。ただ、いつまでもかゆみが続くような場合には、皮膚科の専門医を受診することが勧められます。なぜなら、乾燥肌以外の病気によって、かゆみが引き起こされている可能性もあるからです。医療機関では、医師が患部を見る視診のほか、アレルギーの原因を調べる検査が行われます。また、皮膚以外の病気が疑われる場合には、血液検査や全身の検査が行われます。