今回は前号に引き続き、アルツハイマー病の治療法について述べます。
☆医療機関で行う、いろいろな検査方法
医療機関では、痴呆を診断するために、次のようなことを行います。
①問診、特に家族から話を聞きます。
患者さんにどのような症状が見られるのか、なぜ「おかしい」と思ったのかを、家族から詳しく話を聞きます。
②全身と神経系の診察をします。
③認知機能検査を行います。
認知症の程度などを調べるために行われるのは「ミニメンタルテスト(MMSE)」と呼ばれる検査です。いくつか質問をして、口頭や筆記で答えてもらうテストです。
「今年は何年ですか」「今日は何月何日ですか」「ここは何県ですか」などから始まり、全体で20問程度、30点満点です。各質問の合計点によって、認知機能障害の程度をみます。
④脳の画像検査
「MRl」でアルツハイマー病特有の脳の形態変化を調べます。しかし、早期には脳の形態変化がみられない場合もあるため、必要に応じて脳の血流を調べる検査(SPK CT)や、脳の代謝などを調べる検査(PET)など、脳の機能をみる画像検査も行われます。
☆治療の試み
現在、アルツハイマー病の治療の中心となっているのが、内服薬の塩酸ドネベジル(商品名 アクトネル)による治療です。アルツハイマー病では、脳の神経細胞間で情報を伝える「アセチルコリン」が少なくなります。塩酸ドネペジルはアセチルコリンが不定するのを防ぐ働きがあり、症状の進行を遅らせる効果が期待できます。
アルツハイマー病を根本的に治す治療法になって欲しいのですが、アルツハイマー病では、実際に発症する約20年前から、脳に「アミロイドβたんばく」という物質が沈着し始めるとされています。そこで、アミロイドβたんばくを取り除いたり、沈着を防ぐ方法について、研究が世界中で行われています。一部の薬は、実際に患者さんが使って効果を調べる「治験」も行われています。
しかし、病気がある程度進行すると、残念ながら、初期ほどの効果は得られません。その点でも、アルツハイマー病は早期診断が重要なのです。