『先生、ラジオで聞いたけどカプセル型の内視鏡ができて、飲み込むだけで胃や腸の検査ができるそうですね』と患者さんが真顔で言う。これは少し早とちりです。現状のカプセル内視鏡は、現在行われている胃や腸の内視鏡にかわるものではありません。
☆カプセル内視鏡とは
カプセル内視鏡は、現在、主として小腸の病気(小腸の出血、炎症や腫瘍)の検査に用いられています。平成13年にイスラエルで初めて開発され、長さは26mm、直径11mmのカプセル状の内視鏡です。カプセル内に観察装置があり、無線により情報を体外に発信し、それを体璧につけた受信機で受け、その情報を記録器に保存します。記録器に保存された情報はコンピューターによって、テレビモニターに画像として映し出され、それを解析します。1回の検査時間はおよそ8時間で約5万枚の内視鏡像が撮影され、解析するために約2時間かかります。カプセル内視鏡本体は排便により体外に排出され、使い捨てです。
☆カプセル内視鏡検査の実際
検査実施までは今までの上部消化管内視鏡検査と同様で、9時から始める場合、前日21時以降は絶食です。薬を飲むようにカプセル内視鏡を口から飲み込みます。検査開始後は自由に行動できます。2時間は絶飲食することが必要ですが、その後は、透明の水分ならば摂取してもかまいません。4時間後には軽い食事を摂ってもかまいません。これは腸管の蠕動を高めるためです。8時間たてば記録装置を回収します。
☆検査費用
現在のところカプセル内視鏡に保険適用がなく自費となり、1回の検査にかかる費用は8~9万円です。
☆カプセル内視鏡の欠点
消化管内に狭いところがある場合には腸管内で停留し、排出不能な場合があります。クローン病などという大腸内腔が狭い病気には注意を要することがあり、事前に通過状態を確認してからの使用が必要です。
現在のカプセル内視鏡は、観察専用で、送気・送水・吸引や組織検査などはできません。消化管内を漂う「いかだ」のようなもので受動的にしか移動できません。現状では小腸には有用ですが、胃や大腸の検査には無力です。
☆カプセル内視鏡の今後の展望
今後の開発により自由自在に腸管内を移動する方式が可能になり長時間観察したり、薬剤の散布や検体の採取ができるようになるでしょう。その結果、カプセル内視鏡が全消化菅の検査に利用される可能性もあります。実際2005年にはGiVen社から食道用の内視鏡が、また、2006年には大腸用のカプセル内視鏡がそれぞれ発表されています。