令和6年1月1日より、相続時精算課税制度が改正され、新しく110万円までの非課税制度が導入されました。
今回は改正事項の中で少し誤解されやすい事柄についてご説明いたします。
1 まず110万円の非課税枠ですが、これは受贈者ごとに1年間110万円となります。つまり父・母それぞれと精算課税選択届出書(以下届出書という)を提出し、同一年に110万円ずつ受贈すると、計220万円の贈与を受けたことになりますが、この内非課税額は110万円までとなります。
この場合、それぞれの非課税枠は55万円ずつとなり、控除しきれなかった各55万円ずつは本来の2,500万円の非課税枠から控除され、相続時に相続財産に加算されてしまいます。
せっかくの制度の効力が半減してしまいますので注意が必要です。
2 次に提出先ですが、本来は贈与税の申告書に「届出書」を添付して受贈者の住所地を管轄する税務署に提出します。しかしながら贈与額が110万円以下の場合、贈与税の申告書の提出は不要です。この場合、特例として「届出書」に戸籍謄本等の必要書類を添付して単独で管轄税務署に提出するだけで良いとされています。
3 最後に皆様からのご質問が意外に多いのが、「相続時精算課税制度」を利用すると、相続時に「小規模宅地の特例」を使えないのではないかという点です。
相続時精算課税制度を利用して、居住されている宅地の持分贈与などをされた場合、相続の際には相続財産に加算されることとなります。当該受贈物件は居住用宅地なので「小規模宅地の特例」を適用し80%の評価減があると考えがちですが、「小規模宅地の特例」は「相続・遺贈により取得した・・・」という条件があり、相続時精算課税により取得した物件は含まれませんので、「小規模宅地の特例」を使うことはできません。
これに関する説明がSNSなどに掲載されているため、「相続時精算課税制度適用」=「小規模宅地の特例適用不可」と誤解されていると思われます。
現金や有価証券など、居住用宅地以外の財産を受贈された場合、本来の相続により取得した居住用宅地に関しては、「小規模宅地の特例」を適用することは可能ですのでご安心ください。