財産評価基本通達第1章6 タワマン節税~第3回~
「国税庁が伝家の宝刀を抜いた」
このように評される記事もたくさん出回りました。
財産評価基本通達、これは通達であって法律ではありません。しかしながら実際には、相続税及び贈与税の財産評価を行う際の指針として一般的に認知され活用されています。
【通達第1章6】
本文は「この通達の定めによって評価することが著しく不適当と認められる財産の価額は、国税庁長官の指示を受けて評価する。」という短い一文です。
この一文を今回のタワマン案件に当てはめてみると、「財産評価基本通達どおりに評価すると評価額が著しく低くなり、不適当だから評価方法を国税庁長官が指示する」となります。
ただ、裁判の判決文等を読むとすべてのタワーマンションの評価を今回の事例同様の評価方法とするのではなく、節税のみを目的とした借入金でのタワーマンション購入など、「租税回避」の意図が明らかな場合に限り適用されると示されているようです。
そして、このままでは今後もタワマン節税は後を絶たない、と考えたかどうか定かではありませんが、国税当局は新たな個別通達を発遣したのです。
新たな通達の名称
「居住用の区分所有財産の評価について」
居住用の区分所有財産、いわゆる分譲マンションについては令和6年1月1日以降に相続贈与等により取得したものから、従来の財産評価基本通達ではなく、この個別通達を適用して評価することとしたのです。
【計算式】
区分所有財産の相続税評価額
= 区分所有権の価額(①) + 敷地利用権の価額(②)
① 従来の区分所有権の価額 × 区分所有補正率
(家屋の固定資産税評価額 × 1.0倍)
② 従来の敷地利用権の価額 × 区分所有補正率
(路線価により求めた1㎡単価 × 地積 × 共有持分)
上記の計算式により求める訳ですが、①②どちらにも区分所有補正率という聞きなれない言葉が出てきます。
区分所有補正率とは何か・・・これが今回の通達の肝となる部分であり、タワーマンションの相続税評価上の有利性を打ち消すものであるのです。
次回はこの「区分所有補正率」を求めるために必要な「評価乖離率」「評価水準」について述べていきたいと思います。