冬と言えば「寒さ」です。 高齢者にとって体温の調節機能が衰え、血流が悪くなりやすい季節と言えます。今回は冬に起こる高齢者の健康トラブルとその対策を説明します。
(1)低体温症
低体温症は、長時間寒い場所にいると体温が低下し発症します。意識障害やけいれんなどを起こしたり、進行すると、最悪、呼吸の停止や心停止により死に至ります。
(2)手足の冷え
体温を調節する自律神経の働きは加齢と共に衰え、体温調節がスムーズに行えなくなります。 手足の末梢まで温まりにくくなり、夜も眠れなくなる冷えに悩まされる場合もあります。 入浴で体を温め血行を良くする、 適度に日光を浴びて自律神経を整える、運動をし体を温めることが重要です。
(3)感染症トラブル
寒さが増してくると空気が乾燥し、飛沫感染や空気感染が感染経路とされるインフルエンザウイルスや、新型コロナウイルスによる感染症の流行を引き起こします。高齢者や基礎疾患のある方は重症化し、命にかかわる事態にもなるおそれがあります。
とにかく、標準的な感染症予防対策として手洗い、うがいを適宜行う、マスクを着用するといった対策が有効です。
(4)ヒートショック
ヒートショックとは、寒い部屋から暖かい部屋へ移動すると、急激に血圧の変動が起こり、心臓に負担がかかり脳梗塞や心筋梗塞を起こしやすくなります。 特に寒い時期は居室、脱衣場、浴室の寒暖差が大きくなりがちで、急激な温度変化が心臓に強い負担をかけやすいため、高齢者は意識消失、脳血管疾患、浴槽での水が多く発生します。空間ごとの寒暖差を無くし、体への負担を避けることが非常に大切です。 居室を温めるだけでなく脱衣場やトイレにもヒーターを付け寒暖差を無くしておきましょう。 また、入浴前後には水分を補給することも重要です。
(5)冬季うつ
冬季うつというものあります。冬の初めから徐々に発症し、先に回復するのが特徴です。 症状は気分の落ち込みや不安感などうつ病と変わりませんが、特有の症状として「炭水化物や甘いものばかり食べたくなる」「いくら寝ても寝足りず過眠傾向になる」ことが挙げられます。 寒い季節になり日照時間が減ることで、睡眠を司るホルモンバランスの崩れが原因か、と考えられていますが明らかではありません。 冬季うつを予防するために推奨されている対策には疲れを溜めない、日光を浴びることが有効とされています。 寒い季節には活動量が低下します。適度に日光浴をし、できる範囲で余暇活動を行うなどの対策が重要です。
高齢者にとって寒い季節は様々なトラブルが起こりやすい季節です。中には命にかかわる重大なリスクもあり、寒暖差の大きい冬は体温管理や栄養管理といった健康管理と共に室温・湿度、日光に当たる工夫などの環境整備が大変重要になります。これからも日を追うごとに寒さが強くなってきます。本格的な冬の訪れの前に、 寒さ対策を今一度見直してみましょう。