加齢に伴い、体に様々な支障を来すようになります。日々の生活習慣で起こるいくつかの支障に対する注意点や対処法を知り、上手に老化と付き合いましょう。
A 加齢性難聴(耳が衰える)
加齢性難聴は誰にも起こり、50歳代から始まり、75歳になると70%以上と言われています。
⒈加齢性難聴の原因
外耳から入った音は鼓膜を振動させ、最終的に蝸牛にある有毛細胞で電気信号に変換され、聴神経を介して脳に伝わります。加齢と共に有毛細胞が徐々に壊れて減少し難聴の原因となり、壊れると再生しないと言われています。
⒉加齢性難聴への対処法
加齢性難聴に対する治療法はありませんが、補聴器を使ったり、補聴器を使っても効果が不十分な場合は、手術で人工内耳を埋め込んだりします。また、聞き取り訓練と言うリハビリテーションを行います。
⒊加齢性難聴が認知症に繋がるリスク
加齢性難聴を放置していると、脳への刺激が徐々に低下し認知症を発症するリスクが高くなります。難聴のない人が認知症を発症するリスクに比べ、軽度難聴のある人は約2倍、高度難聴のある人で倍リスクが高くなると報告されています。
また、難聴のある人は転倒のリスクも3倍高くなると報告されています。
B誤嚥性肺炎
のどの筋肉が衰えて、飲み込む力が弱くなると、食べ物や唾液に含まれた細菌が誤嚥により肺に落ち込んで誤嚥性肺炎を引き起こします。肺炎で入院した高齢の患者さんのうち、80歳代では80%、90歳以上では95%以上が誤嚥性肺炎との報告があります。また、高齢者では、睡眠中に唾液が少しずつ気管に落ちて肺炎が起こることもあり注意が必要です。
⒈誤嚥性肺炎の原因
飲み込む力が衰える原因には2つあります。
①のどを支える筋肉が衰える
加齢と共にのどを支える筋肉が衰えることにより、のどに食べ物が残りやすくなります。また、喉頭蓋が気管にふたをするタイミングがあわなくなって、食べ物が気管に落ち込み誤嚥を起こします。
②のどの感覚が衰える
普通、嚥下反射が起こりものをのみこめますが、のどの感覚が衰えると嚥下反射がうまく機能しなくなってしまいます。
⒉誤嚥性肺炎を予防するため
①毎食後と寝る前に、歯磨きをして口の中を清潔に保つ
②食後、すぐに横にならないこと
食後すぐに、横になると、胃内で胃液や食べ物の逆流が起こり誤嚥性肺炎の原因になります。
C歩行能力の低下
歩行能力が低下すると次の様な影響が出ます。
①歩幅が小さく、歩行速度が遅くなる
②歩行筋力が低下する
足腰の筋力が低下すると転倒するリスクが高まります。
③歩行のバランスを崩す
次の様なデータが報告されています。65歳以上では、5人に1人が転倒を経験し、年齢が高くなるにつれ転倒率は高くなります。転倒によるリスクは、高齢者にとって重大で、高齢者が転倒した場合、5~10%の方が骨折、約5%は骨折以外の重大な怪我を負う可能性がある、と言われています。特に、大腿骨頚部骨折は、90%以上が転倒によるものとされています。筋力の低下は年齢のせいだと考えがちですが、実は運動不足によるものが大きく、老年であっても日常生活の中で筋力を鍛える機会をつくることが大事です。
普段あまり階段を使っていない人は、意識して階段を使いましょう。また、バスや車などの乗り物に乗らず、歩ける距離は積極的に歩くのも良い筋力アップのトレーニングになります。