暑い日が続く夏は、熱中症に注意が必要ですが、さらに用心しなければならないのは脳梗塞です。脳梗塞というと冬に発症しやすい病気と思われがちですが、暑い夏の日の脱水や血圧の低下は、脳梗塞発症の誘因となります。脱水の状態になると、血液の濃度が上がり、首や脳の動脈、心臓内などで血栓ができやすくなります。また血圧が低下すると、脳の細い血管に血液を送る力が低下するために動脈硬化で血管が狭くなっている部位より先で血液が途絶え、最終的に詰まってしまいます。特に脳梗塞の危険因子をもっている人は、脳梗塞発症の危険性が高くなりやすいといえます。
夏の脳梗塞を防ぐためのいろいろな対策を挙げます。
A 危険因子を管理する
脳梗塞の発症リスクを下げるには、危険因子を普段からきちんと管理することが、一番の近道です。
⒈高血圧の管理
高血圧症の人でも、夏の間は、血圧は下がり気味になります。血圧の数値だけを見て服薬を中止するのは勧められません。血圧は変動します。夏の間も継続して飲んでください。中止するのではなく、血圧の値に応じて薬の種類や量を医師に調節してもらうといいでしょう。
⒉心房細動
心原性脳塞栓症の原因となる心房細動がある人は、健康診断などで定期的に心電図検査を受け、心房細動の有無を確認しておくことが大切です。また普段から自分で脈を測るようにして脈に乱れがある場合は、やはり、心電図検査を受けるようにしてください。
⒊糖尿病
夏はイベントが多く、つい食べ過ぎたり飲み過ぎたりして、糖尿病の管理がおろそかになりがちな時期です。糖尿病のコントロールがうまくいかず、脱水が起こりやすくなることが分かっています。油断せずに食事や運動に気をつけましょう。
⒋脂質異常症
中性脂肪やLDLコレステロール値が高いと動脈硬化を進行させる原因になります。普段から数値が高過ぎないか、くれぐれも注意してください。
B 脱水を起こさない
脳梗塞の誘因としての脱水症を起こさないことがとても大切です。
⒈ビールを飲む時は、水も一緒に飲む
暑い夏にビールを飲むと、のどの渇きを止めますが、ビールには利尿作用があるのでかえって脱水につながることがあります。ビールを飲む時は合わせてコップ一杯の水も飲むようにしましょう。またお茶も利尿作用がありますが、利尿作用というよりは水分補給の意味合いでお茶を飲んでください。
⒉利尿作用のある薬は飲むタイミングが大事です。高血圧治療に使われる利尿薬や、糖尿病薬には脱水につながりやすいものがあります。利尿作用のある薬を服用している場合、医師と相談の上、寝る前でなく朝に飲んで夜間の脱水を避けるよう調整してもらいましょう。
⒊こまめに水分を補給する
脱水を防ぐためには、水分の補給が大切です。のどの渇きを感じなくても、水やお茶をこまめに飲むことです。一方、脱水を気にして水分をとり過ぎてしまうことにも問題です。高齢者が、寝る前に水分をとり過ぎると、頻尿が起こって睡眠が妨げられることがあります。水分は寝る前は控えめにして朝に飲みましょう。
⒋エアコンや扇風機の風が直接体に当たらないようにしましょう。夏場は就寝中に熱中症が起こることもあるのでエアコンをかけて寝ることもあります。その風が直接体に当たると、脱水を引き起こす危険性があります。風向きを調節するよう注意しましょう。