圧迫骨折とは、背骨の椎体が潰れて起こる骨折で原因の多くは骨粗鬆症です。骨粗鬆症のある人は、骨の強度が低下し、もろくなっています。そのため転んで尻餅をつくだけでも、骨折が起こることがあります。また、転倒などによる衝撃がなくても、重いものを持つなどといった日常動作も圧迫骨折につながります。圧迫骨折は寝たきりの原因にもなるため、適切な治療を受けることが大切です。骨粗鬆症による圧迫骨折の多くは、背中と腰の境目にあたる胸椎と腰椎の境目の移行部に発生します。そして、1ヵ所にとどまらず、骨折部位が拡大していくことがよくあります。椎体が何ヵ所も潰れると、背骨が変形して、背中や腰が曲がり、背筋を伸ばすことができなくなります。
通常の圧迫骨折は、椎体の前方だけが潰れます。しかし、なかには椎体の後方も潰れる場合があり、破裂骨折と呼ばれています。椎体の後方が潰れて後ろに飛び出すと、神経を圧迫することがあり、痛みのほかに下半身のシビレやマヒなどの神経症状が現れます。
☆圧迫骨折の治療
圧迫骨折は、椎体XPやMRI(電磁共鳴画像)などの画像検査によって診断されます。圧迫骨折と診断された場合は、麻痺などの神経症状がなければまず保存療法です。
1.保存療法
安静と痛みのコントロールが基本です。無理をせず、できるだけ安静を保ち、コルセットやギプスなどで、骨折した部分を中心にしっかり固定し、骨がくっつくのを待ちます。骨粗鬆症があれば、骨粗鬆症の薬による治療が行われます。保存療法で痛みが軽くなってきたら、リハビリを開始します。多くの場合、保存療法を2~3ヵ月間行えば、折れた骨がくっつき、痛みも軽くなっていきます。
2椎体形成術
保存療法を2~3ヵ月間続けても、骨がくっつかない場合は、椎体形成術が行われます。椎体形成術は、圧迫骨折を起こして潰れた椎体に、医療用の骨セメントなどを注入して骨を修復する手術です。最近では、バルーン椎体形成術が行われています。患者さんをうつぶせにして、麻酔をかけたあとに、エックス線で患部を観察しながら、潰れた椎体内に特殊な針を刺します。そして、針の先から出たバルーンを膨らませて、椎体を一時的に、元の形に復元します。椎体からバルーンを抜きその空間にペースト状の骨セメントを注入します。骨セメントが固まると、潰れた椎体はほぼ元どおりに修復されます。手術は、順調にいけば10~15分程度です。ただし、椎体の潰れ方が激しい場合などは手術に4~50分程度かかることがあります。入院期間は数日間で、退院後はリハビリを行います。
椎体形成術を受けると、痛みが軽くなり、曲がった背中や腰も改善します。ただし、骨粗鬆症のある人は、全身の骨の強度が低下しているため、治療後、再び別の椎体で圧迫骨折が起こる可能性があります。特に、椎体形成術を行った椎体は強度が増すため、その上下の、治療を行っていない椎体に負担がかかり、圧迫骨折を引き起こすことがあります。そのためコルセットを日常的に使い、激しい運動は行わないようにします。圧迫骨折が再び起こるのを防ぐためには、骨粗鬆症の治療を継続して骨を強くする必要があります。
骨粗鬆症の薬物治療の話はスペースがなくなりました。最近様々な薬剤が使われていますので担当医によく相談してください。ただし、すぐに効果が出ないからと自己判断で薬の服用を止めないでください。