日本人の死亡原因第1位はがんです。ところが、胃がんや大腸がんは、早期の段階(Ⅰ期)で治療すれば、5年後の生存率は97%以上。死亡者数が最も多い肺がんであっても早期(Ⅰ期)に治療すれば、5年後の生存率は80%と、がんは今や決して治らない病気ではありません。しかし、進行がんや再発した場合は治療の難易度は高く、生存率は低い。 進行がんの新しい治療法として「中性子線」と呼ばれる放射線を使ったBNCT(ホウ素中性子補足療法)という治療法がすごい。これまでの放射線治療では、がん細胞の周りにある正常な細胞も攻撃してしまうという欠点があったが、この治療は、がん細胞だけに集まる薬剤(ホウ素化合物)を体に投与し、そこに「中性子線」を照射すると、がんに集まった薬剤が核反応を起こしてがん細胞だけを死滅させることができます。また、今まで、「中性子線」は、巨大な原子炉でしか作り出せなかったが、「加速器」と呼ばれる小型の装置が開発され、原子炉がなくても「中性子線」を生み出せるようになりました。 ☆通常の放射線治療とBNCTの違いについて 1.国内の多くの施設で取り入れられている放射線治療は、X線やガンマ線と呼ばれる放射線を使っています。悪性グリオーマは広い範囲に微小浸潤しているため、腫瘍細胞を完全に死滅させるには広い範囲の正常脳組織に大量の放射線を照射する必要が生じます。強力に治療を行おうとすればするほど微小浸潤のある周りの正常脳組織の障害も避けられないというジレンマがあり、これが治療の限界となっています。 2.BNCTで発生するアルファ線と7Li粒子は、X線やガンマ線と異なり、発生してから止まるまでの距離(飛程)が短く(ほぼ細胞1個分の長さ)、腫瘍細胞で発生したアルファ線も7Li粒子も周囲の正常脳組織に与える影響は小さいとされています。また、BNCTで発生するアルファ線と7LiはX線やガンマ線に比べて生物学的な効果が2~3倍程度高いとされており、治療効果が高いことが期待されます。 ☆BNCT(ホウ素中性子捕捉療法)の概要 ホウ素化合物薬剤を点滴で体内へ入れます。ホウ素はがん細胞に取り込まれやすい性質をもっていますので、がん細胞へ取り込まれます。そこへ放射線の一種である「中性子線」を照射します。中性子はホウ素にあたると細胞1個分の規模で核分裂を起こし、がん細胞を破壊するのです。ホウ素を取り込まない正常な細胞はこの治療で傷つくことはありません。 ☆中性子を作りだす治療装置について 1.これまでは原子炉を使った治療装置では、煩雑な管理や複雑な取扱い、原子炉規制法の規制が強く医療装置として成り立ちませんでした。 2.これからの〝原子炉を使わない加速器〟を使った治療装置は安全、簡便、コンパクトなので医療装置として病院内に設置可能で普及が期待できます。 ☆関西におけるBNCT取組み機関 関西では京都大学原子炉実験所のほか、大阪大学、大阪府立大学などBNCTに必要な技術の研究拠点が揃っているほか、多くの大学病院や医療機関もかかわっており、我が国のBNC T研究をリードしています。下記の施設にお問い合わせください。 |
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