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子どもをアナフィラキシーから守るために、『エピペン』を!

東京の小学校で、食物アレルギーの5年生女児が給食を食べて、アナフィラキシー・ショックを起こし、死亡した事故。この事故の報告書では、『エピペン』(緊急注射用キット)が遅れたことが死亡の直接的原因の1つとされており、女児の救命もできた可能性が指摘されています。
☆アナフィラキシーって?
 アナフィラキシーは、発症後、極めて短い時間のうちに全身性にアレルギー症状が出る反応です。血圧の低下や意識障害などを引き起こし、場合によっては生命を脅かす危険な状態になることもあります。この生命に危険な状態をアナフィラキシーショックといいます。厚生労働省の人口動態統計の集計によると、日本におけるアナフィラキシーによる年間死亡者数は70名以上となっています。

☆症状が出るまでの時間は、アレルゲンによって異なります
 アナフィラキシーの症状が出るまでの時間は、アレルゲンや患者さんによって差があります。薬物や蜂毒は直接体内に入るため、早く症状が出ますが食べ物は胃や腸で消化され吸収されるまでに時間がかかるため、症状が出るまで薬物や蜂毒よりは時間がかかります。アナフィラキシーが原因で心停止に至った例の、心停止までの平均時間は、薬物で5分、蜂毒が15分、食物では30分といわれます(アナフィラキシーがすべて心停止に至るわけではありません)。

☆『エピペン』とは、
 『エピペン』は、ハチ刺傷、食物アレルギーなどによるアナフィラキシーに対し、患者やその家族が迅速に使えるようにということで発売された緊急注射用のキットです。アナフィラキシーショックが出たら、最良の条件でも救急車の到着と病院への搬送を待てない場合が多く、「迷わず」即座に注射することが大事だとされています。緊急時は衣服の上からでも構いません。ただし、あくまで緊急用であり、効果は10・15分しか続かず、注射後にそのまま放置すれば症状がぶり返すことが考えられます。
 本人用の『エピペン』は保健室・職員室などに保管することはせず、カバンやランドセルなどに入れて持ち歩くことが原則です。使用者は患者本人(未成年の場合は説明済みの保護者)ですが、必要に応じて救急救命士、保育士、教職員も使用可能です。
 ただし、1本の『エピペン』は1回分のみで、たとえ注射液が残ってもそれは使えません。

☆『エピペン』の使用上のポイントは?
1どのような症状を呈した時に、『エピペン』を打ったらよいのか?
 呼吸がゼーゼーするなどの症状に気づいたらできるだけ早く打つこと。「ショックでないときに打っても問題ないが、打たずに手遅れになると命に関わる」のです。さらに、意識がはっきりしない、脱力状態に陥っているなどの場合には、『エピペン』を打たないと生命の危険にさらされる可能性が大きくなります。日頃から、関係者(学校、幼稚園、保育園のスタッフなど)は児童(園児)のアレルギー症状が出現した時の対処法を確認しておくとともに、緊急時の医薬品を準備しておく必要があります。

2資格なしで注射できるのか?
 「アナフィラキシーショックを起こし、『エピペン』を自ら注射できない状況にある児童生徒等に代わり、その場に居合わせた教職員が『エピペン』を注射することは、医師法違反にはならないと考えられます。人命救助の観点から刑法や民法等の規定により、その責任は問われないものと考えられます。」

3実例
 2012年12月20日調布市立富士見台小学校でのチーズアレルギー死亡事故で、小学校5年の女児は『エピペン』を持っていたが、体調不良を訴えたときに「違う、打たないで」と担任に訴えたために打たなかった。本人はぜんそくの発作だと思ったらしい。症状が悪化したときに養護教諭もいたが決断できなかった。立てなくなって10分後に校長が打ったが間に合わず、救急車到着時には心肺停止状態であった。

☆食物アレルギーと間違えやすい病気
 牛乳を飲んでおなかがゴロゴロしたり下痢をしたりするのは、牛乳に含まれる乳糖が分解できないために起きる〝乳糖不耐症〟というもので、食物アレルギーとは分けて考える必要があります。また、細菌やウイルスなどの病原微生物感染による急性胃腸炎や、毒キノコやフグなどの毒性成分による中毒症状も食物アレルギーには含まれません。食べ物を食べて何らかの症状が出たからといって食物アレルギーだと自己判断することは、判断を誤る可能性があり、危険です。

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