先日、かかりつけの歯科医院で歯周病の話をお聞きしましたので書いてみます。 歯周病とは、歯及びその周囲におこる疾患の総称で、歯肉に限局した炎症を歯肉炎、その炎症が歯の周囲組織にまで広がると歯周炎といいます。
★中高年齢者の80%以上が歯周病
〃80歳になっても自分の歯を20本以上保とう〃という「8020運動」が、1989年から、厚生労働省(当時厚生省)と日本歯科医師会の提唱で進められてきています。現在、80歳以上の人は、平均で自分の歯をおよそ7本しか保てていないそうです。また、中高年齢者の80%以上が歯周病にかかり、その歯を失う原因で最も多いのが歯周病であることが分っています。
★歯周炎の原因と病状の進行
歯周病の原因は、歯垢が歯の表面につくことで始まります。歯垢は、“生きた細菌の集団”で、食べかすなどとは違って、糊のように歯にべったりと付着するので、歯をすすぐ程度では落とすことができません。歯に付着した歯垢は増殖して、歯と歯肉の間へ広がっていきます。最初は歯肉に炎症が起きます。異物である歯垢に対して炎症反応が起こり、歯肉が赤く腫れたり、出血したりします(歯肉炎のレベル)。
歯肉炎の段階なら、きちんとセルフケアをすることによって、健康な状態に戻すことができますが、多くの人が放置してしまいがちです。すると、歯垢はさらに増えて、歯肉や周囲組織に炎症=歯周炎を起こします。歯垢を放置すると、石灰化して「歯石」という塊になります。さらに進むと、歯がぐらぐらして、抜け落ちてしまうことになります。
★歯周病を予防する
(1)正しく歯を磨く
歯周病を予防するには、毎日の歯磨きによって、歯の表面についた歯垢を確実に落とすことが大切です。次のような方法で、毎日正しく磨きましょう。
①歯ブラシの当て方
歯と歯肉の境目にたまった歯垢が歯周病の大きな原因です。これを取り除くために、歯ブラシを、歯と歯肉の境目に90度の角度で当てます。歯の裏側には90度の角度で当てられないので、45度の角度で当てます。前歯の裏側には、上下とも歯ブラシを縦に当てるか、毛束が1つの歯ブラシを使うとよいでしょう。
②磨き方
歯ブラシの毛先が開かない程度の軽い力で、小刻みに左右に動かします。理想的には、同じところを30往復くらい磨くとよいでしょう。
③歯ブラシ選び
歯ブラシを選ぶときのポイントは、「毛先のサイズ、断面、硬さ」です。 毛先のサイズは、自分の奥歯2本分、または前歯3本分くらいがよいでしょう。大きすぎると奥のほうや細かいところが磨きにくくなります。次に毛先の断面は、平らなものがお勧めです。毛先が硬いほど歯垢を取り除く力は強くなりますが、硬い歯ブラシでゴシゴシ磨くと歯肉を傷つけてしまいます。
歯肉の状態が健康なら「普通」の硬さの歯ブラシを、歯肉から出血しやすくなっている場合は「柔らかめ」の歯ブラシを使います。
歯ブラシは、毛先が開いてきたら取り替えることも大切です。
④その他
歯ブラシで磨けるのは表側と裏側だけで、歯と歯の間は磨けません。そこで、デンタルフロスや歯間ブラシで歯間の歯垢を取り除きます。デンタルフロスで、歯間に通して歯垢かき出します。また、歯周病になると、歯と歯の間に隙間があいてくるので、その場合はデンタルフロスよりも、隙間に合った太さの歯間ブラシを使うとよいでしょう。自分の歯の状態に合わせて歯ブラシを替えて磨くとよいでしょう。
(2)効果的な口腔ケアの方法
歯磨きは、毎食後に欠かさず行いましょう。デンタルフロスや歯間ブラシも、毎食後の歯磨きのあとに使うのが理想的です。しかし、朝や昼は時間がないという場合は、歯磨きだけ行い、夕食後に30分ほど時間をかけて、歯磨きや、デンタルフロスや歯間ブラシを使うとよいでしょう。歯磨き剤をつけないでブラッシングをすると、丁寧に磨くことができます。
(3)歯科定期健診のすすめ
自分でケアしても、どうしても磨き残しや歯垢が残ってしまい、歯石ができてしまいます。歯石はブラッシングでは除去することができません。歯科医にて専用の器具や超音波などを使用して除去する必要があります。少なくとも年に一回は歯科健診を受け、歯垢、歯石のチェックを受け、ご自分の歯の状態をご相談されればいかがでしょうか。