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健康クリニック 村木クリニック院長 医学博士 村木 宏要 先生

胃瘻(いろう)でも経鼻(けいび)でもない第三の経管栄養法がある
-その都度、口から食道へチューブを挿入して栄養剤を投与する-


 口からの栄養補給で、嚥下は非常に重要です。嚥下障害が重度で、口から食べられない患者さんがいます。 誤嚥性の肺炎を繰り返し、十分な栄養が摂れない状況が続く場合、非常に危険です。何らかの方法で、栄養をきちんと摂ることが必要です。最近、胃瘻(PEG)や経鼻胃経管栄養法(NG法)と異なる、第三の経管栄養法として間歇的口腔食道経管栄養法(OE法)が注目されています。

☆間歇的口腔食道経管栄養法
(OE法)とは
 このOE法は、食事の時だけチューブを飲み込んで、先端を食道まで挿入し、栄養剤を注入し、それが終われば抜去するというものです。胃瘻のような手術の必要がなく、また経鼻胃経管栄養法のようなチューブの留置も必要ありません。チューブの先端が食道に位置するので、経鼻胃管で直接胃に栄養剤を入れるのに比べて、より生理的で、栄養剤の注入速度を速くすることができます。ただ、食事の度ごとにチューブを安全に出し入れしなければならないし、また、チューブを飲み込む時に「ゲーッ」と嘔吐反射が出てしまうことも多く、誰にでもできるものではありません。
 OE法の対象となるのは、嚥下障害を有す患者さんの1割程度と考えられています。具体的には、咽頭部麻痺があるものの嚥下機能の回復が見込める患者さんです。また、少量であれば口から誤嚥を生じずに食べられるが、必要な栄養や水分を十分摂取できないような患者さんに補助的に活用されることもあります。

☆OE法の効用と留意点
 OE法では食道の蠕動運動を惹起し、下痢や胃食道逆流を予防する目的で、食道に栄養剤を注入します。注入が終わったらチューブをすぐに抜き取るため、NG法と違いチューブ留置による違和感がありません。慣れれば10秒ほどでチューブを挿入できるので、患者さんの苦痛はほとんどありません。また、チューブを食道に入れる際に嚥下が生じることから、嚥下リハビリテーションの効果も期待できます。また、通常は入院中の患者さんに看護師などが行っていますが、訓練を重ねれば患者さん自身や介護者でもチューブを入れられるようになり、実際、在宅でOE法を行っている例もあります。
 OE法で用いるチューブは比較的太めで、先端が丸く肉厚なシリコン製チューブであれば、どの製品でもよいとされますが、OE法に用いる目的で商品化されたチューブもあります。太めのチューブを用いることから、胃瘻でも用いられる天然濃厚流動食や、半固形化栄養剤の注入が可能です。一般的には1分間に50ml、合計500mlを10〜15分掛けて注入します。一回に2時間ほど掛かるNG法と違い短時問で終了することも、患者さんや介護者から喜ばれている点です。但し、チューブの誤挿入は要注意です。チューブの誤挿入で患者さんが死亡したケースが過去に報告されています。特に、誤嚥した際の気道防御反射が弱い患者さんでは誤挿入を発見しにくく、事故のリスクがあります。こういった事故を防ぐため、日本摂食嚥下リハビリテーション学会は「間歇的口腔食道経管栄養法の標準的手順」を学会のウェブサイト上に公開しています。
 上記OE法の標準的手順を取りまとめられた、化学療法研究所附属病院の武原格先生は、「OE法は患者への負担が少なく嚥下機能の回復につながる」と強調する一方で、「事故を生じさせないため、嚥下障害と嚥下リハビリテーションの全体を学んだ上で、手順を守って実施してほしい」と語っておられます。