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健康クリニック 村木クリニック院長 医学博士 村木 宏要 先生

「年のせい」とあきらめないで!高齢者の『特発性正常圧水頭症』〜手術で治せる認知症もある〜


新しい2型糖尿病治療薬として、SGLT2阻害薬の研究開発が進み、日本でも今年5月から処方できるようになりました。今回は、このSGLT2阻害薬についてお話ししたいと思います。

1.SGLTとは
 尿は腎臓で作られます。血液が腎臓を通過するときに、アミノ酸や糖、水分など体にとって必要なものが血液中へと再吸収されます。特に糖の吸収に大きく関わっている部位が腎臓の近位尿細管で、糖のほとんどが再吸収されます。これに大きく関わっているのがSGLT2です。(糖の輸送に関わるSGLTには主にSGLT1、SGLT2、SGLT3の三つが存在しますが、近位尿細管に存在するものがSGLT2です。)
 腎臓で作られた原尿に含まれる糖の再吸収の90%は主に近位尿細管で行われ、SGLT2が尿中の糖を認識して取り込み、血液中へ戻す働きをします。

2.SGLT2阻害薬の効果
 SGLT2は近位尿細管で糖を再吸収し、血液中に糖を戻します。糖が再吸収された分だけ、血液中の糖濃度も高くなります。  糖尿病患者では、もともと血液中に含まれる糖分が多く、更に尿に含まれる糖まで再吸収されると、一層血液中の糖分が増え、糖の再吸収が間に合わなくなった結果、尿に多量の糖が検出されます。
 糖尿病で問題となるのは「血液中にどれだけの糖が含まれているか」になります。血液中の糖が多ければ多いほど、糖による毒性が現れてしまいます。
 その結果、網膜症や腎症、神経障害などの合併症を引き起こします。糖尿病の治療で重要なのは「血液中の糖を減らすこと」で、SGLT2を阻害して近位尿細管での糖の再吸収を抑えることができれば、尿と共に糖を積極的に体外へと排泄することが可能になり血糖が低下します。
 一方、血糖値を下げる唯一のホルモンとして膵臓から分泌されるインスリンがあります。糖尿病治療薬の多くは、膵臓のランゲルハンス島β細胞に働きかけインスリン分泌を高めることで血糖値を下げます。しかし、過度に、長期に服用を続けると膵臓を疲弊させます。
 SGLT2阻害薬はインスリンに関係なく血糖値を下げ、高血糖による種々の障害を改善します。さらに血糖値を下げることで疲弊した膵臓ランゲルハンス島β細胞の負担を下げ、分泌能力を回復させることも可能です。その他にも血糖値を下げることにより糖毒性を改善することで、インスリン抵抗性改善作用を示すことも認められています。

3.SGLT2阻害薬の副作用
(1)低血糖症状を含めた重篤な副作用が出現する可能性は低いと考えられています。
(2)SGLT2阻害薬を服用すると尿に含まれる糖分が高くなるので、その分だけ尿路感染の危険性が高まります。特に女性は尿道が短いために膀胱炎などの感染症を引き起こしやすくなると言われています。
(3)SGLTの発現が血液や尿などの水輸送活性と結びついていることが分かってきていますので、SGLTを阻害することで、多尿やそれに伴う脱水症状をもたらす可能性があります。特に高齢者では注意が必要である。
(4)腎機能障害を進めることが多い。十分に経過観察し機能低下が強い場合は中止すること。
 こうしたSGLT2阻害薬の特性を考慮すると、肥満傾向、既存の血糖降下薬で効果不十分な患者、非高齢者で罹病期間の短い患者などから使用するほうが無難と考えます。

最後に
 糖尿病講演会での質疑応答であったものを追加しておきます。
Q1:夏に向けて、患者さんに注意していただくことは?
A1:SGLT2阻害薬を服用すると、1日400〜500mLの尿量が増加するため、「外出時にも充分に水分補給する」、「糖分を含んだソフトドリンクで補給しない」、と言ったことを、必ず指導すること。

Q2:SGLT2阻害薬の体重減少作用についての留意点は?
A2:臨床試験では計算上は6〜7kg程度減少すると考えられたが、実際には2〜3kgに止った。食事摂取量やその内容についての追跡調査が必要。

 SGLT2阻害薬は処方が始まったばかりであり、その服用は医師の管理のもとで行われることが大切です。