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健康クリニック 村木クリニック院長 医学博士 村木 宏要 先生

変わる脳梗塞治療-スピードある対応が鍵!-


☆一刻も早く、血流を再開通させる☆  以前は脳梗塞に対し発症初期から適切な治療法がなく、命が助かっても重い後遺症が残りました。しかし、現在はスピードある対応ができ、血栓を取り除ければかなり後遺症を軽くできるようになりました。一刻も早く、血流を再開通させる必要があります。なぜ急ぐのかというと、時間がたつほど脳梗塞の範囲が広がり、回復が困難になるからです。詰まった血栓を溶かすか取り除くかして、早めに血流を再開通させれば、まだ生き残っている脳細胞を助けられる可能性があります。血管の再開通がその命運を分けます。
 今回は脳梗塞による血栓除去に効果的な、スピードある(血流)再開通療法である「t‐PA静注療法」と「血管内治療」について述べます。

(1)「t‐PA静注療法」
 発症から3時間以内に血栓溶解薬の「t‐PA」を静脈に点滴して血栓を溶かします。この治療法は、脳梗塞の診断さえつけば「t‐PA」を点滴投与するだけでよく、特殊な技術や設備を必要としないことが最大のメリットです。劇的な効果をもたらす療法です。  但し、その限界も指摘されています。
@発症後3時間以内にしか治療できない。
 時間的な制約があることから、治療を受けられる患者さんが脳梗塞の全患者の5%以下と非常に少ないことです。(欧米では発症後4・5時間までに延長することが検討されています)
A太い血管には効果が弱い。
 太い血管ほど詰まると重症になるので、早期に再開通させたいが太い血管には「t‐PA」の効果が弱い傾向があります。

(2)急速に進化する「血管内治療」
 「t‐PA静注療法」を補う療法として、再開通率が高く、時間的にも余裕がある「血管内治療」に注目が集まっています。
@いままでのポピュラーな血栓溶解薬動脈内投与。
 これはカテーテルを脳の動脈の詰まった部分まで進め、血栓溶解薬(ウロキナーゼなど)を直接注入して血栓を溶かす治療法(「動注療法」)で、発症6時間以内の患者さんが対象となります。とくに中大脳動脈という血管において有効性が認められています。実際の治療では、「動注療法」に加えて、風船つきのカテーテルによる血栓破砕、血管拡張(「血管形成術」)などの手技を追加することもあります。
A血栓を機械的に抜き取る新デバイス「メルシー・リトリーバー」
 日本では2010年10月から、この新しいデバイスが、保険診療で使えるようになりました。
 「メルシー」は、マイクロカテーテルと、形状記憶されたコイル状の合金製ワイヤー(ループ)、風船つきのカテーテルの3つのパーツから成る血栓回収器具です。治療時は風船をふくらませて血流を止め、ワイヤーの先端のコイル状の部分に血栓を引っ掛けて回収するしくみです。ワイヤーには細い糸がたくさんついていて、血栓を取り逃がさないように工夫されています。
 「メルシー」の対象となるのは、「t‐PA静注療法」の適応外の患者さんか、または無効であった患者さんです。「メルシー」は発症後8時間以内に行い、主に太い血管の再開通に向いていると考えられています。
 米国で行われた臨床試験(「メルシートライアル」)では、「メルシー」と血栓溶解薬の「動注療法」を併用した場合の再開通率は約70%、単独使用でも約60%、再開通した場合の社会復帰率は49%と、非常によい結果が出ています。

 現在脳梗塞治療の最前線にいる、ある専門医は、日本における脳梗塞診療体制への期待として次のように述べています。
 「脳梗塞の兆候に気づいたら、急いで近くの脳梗塞診療病院に行き「t‐PA」の点滴治療(「ドリップ」)を受けましょう。万が一、再開通できなかったときは大きな病院に移動しましょう。そして、「血管内治療」で血栓を取り除きましょう。」
 脳梗塞診療における、より一層スピードある診療体制がいかに大切か、を言ったものです。皆さんも心に留めておいて下さい。