阪神グリーンクラブ・ニュース 136

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法律相談 弁護士 原田 弘 先生

著しい背任行為により信頼関係が破壊されたときは


Q.質問

私はAさんに倉庫の敷地にするため土地を貸しました。ところがAさんは朝早くから深夜まで荷物の出し入れのためトラックを出入させたり、倉庫の品物が悪臭を放ったりで、近隣住民から私に何度も抗議がありました。
 Aさんには再三注意したのですが聞き入れてくれません。こんな場合借地契約を解除できるでしょうか。

 

A.回答

 契約で定めた賃借人の義務は、主として土地を使用する対価として賃料を支払うことであり、賃貸人の義務は完全な状態で賃借物を使用させるというものであります。但し、賃料さえ払えばどのようにでも自由に使用収益できるかと言いますと、そこにはおのずから制約があります。
民法は第1条で、私権は、公共の福祉に適合しなければならない。2項で、権利の行使及び義務の履行は、信義に従い誠実に行わなければならない。3項で、権利の濫用は、これを許さない。としております。
このように、私権であっても、公共の福祉や信義誠実の原則に従って行使することを求め、それが権利の濫用にわたる場合は、これを許さないとしておりますので、借他人もこうした制約から免れることはできません。  
こうした制約があっても、近隣に迷惑をかけたといって直ちに契約を解除できるものではありません。


 借地において借他人の反社会的な行為が土地賃貸借契約の解除原因になるかどうかについての最高裁の判例では、「賃貸借契約の当事者の一方が、右契約に基づき信義則上当事者に要求される義務に違反して、その信頼関係を破壊することにより、賃貸借の継続を著しく困難ならしめたときは、他方の当事者は、催告なくして賃貸借契約を解除することができる」としているものがあります。
この理論を進めると、契約上の主たる債務不履行がなくても、著しい背任行為により信頼関係が破壊されたときは、契約の解除権が発生することになります。
ご質間の場合、深夜の騒音や悪臭のため近隣住民からAさんに対し、使用差止の仮処分の申請が出て、貴方も債務者として訴えられる等の事情があるような場合、これら反社会的な行為を止めるよう催告して、それでも効果がないようなときは契約解除も可能となるものと考えます。